宇佐美毅の研究内容
① 現代文化としてのテレビドラマ研究(2010年~)
主として日本のテレビドラマ番組と視聴状況を、フィクション研究の対象として考察しています。この研究の主な成果は、私の著書『テレビドラマを学問する』(中央大学出版部、2012年)にまとめられています。
② 現代文学の小説史的研究(2005年~)
村上春樹をはじめとする現代文学を歴史的観点から考察し、明治期以降の日本の小説史に位置づける研究をしています。子の研究の主な成果は、私の編著『村上春樹と一九八〇年代』『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう、2008年・2012年)にまとめられています。
③ 近代文学成立期の小説表現研究(1990年~)
1880年代は日本の文学の表現が大きく変化する時期にあたります。坪内逍遙、二葉亭四迷、嵯峨の屋おむろ、広津柳浪、樋口一葉らを通して、特に小説の表現面の変化を歴史的に考察しています。この研究の主な成果は、私の著書『小説表現としての近代』(おうふう、2004年)にまとめられています。
『ドライブ・マイ・カー』―小説の問い/映画の答え― 「Chuo Online」2022年3月10日
恋愛ドラマ不毛といわれる時代に ―『いつかこの恋を思い出して、きっと泣いてしまう』と現代の恋愛ドラマ 『ユリイカ』(青土社、2021年1月)
村上春樹作品における『羊をめぐる冒険』の位置 ―『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』との関係から『中央大学研究紀要』通巻274号(2019年3月)
テレビドラマ学際的分析の試み―『家政婦のミタ』を例に― 『中央大学文学部紀要』通巻259号(2016年3月) ※林明子、ヒラリア・ゴスマンと共著
村上春樹における〈ことば〉と〈他者〉 ―『ノルウェイの森』と『ねじまき鳥クロニクル』― 『国語と国文学』(2015年10月)
『小説表現としての近代』(単著、おうふう、2004年12月)
日本の近代文学、特に小説表現が持つ方向性を論じた著書で、これまでの研究の集大成となるものです。日本の近代文学が成立する明治初期から中期にかけて重要な役割を果たした翻訳小説・坪内逍遙・二葉亭四迷・広津柳浪・石橋忍月・樋口一葉らの小説表現を詳細に検討し、そこにさまざまな異なる試みがなされていながらも、一方で大きな方向性が見出されることを考察しています。
『新日本古典文学大系明治編21硯友社文学集』(共著、岩波書店、2005年1月)
日本の古典文学に詳細な注釈を付すことによって、今日の読者の便宜をはかるシリーズの一冊です。その中で明治期の文学を取り上げた新シリーズの一冊において、広津柳浪『黒蜥蜴』『浅瀬の波』川上眉山『うらおもて』『ふところ日記』の四作品に注釈を付し、あわせて、解説論文「硯友社の内なる外部」を執筆・掲載しています。
『村上春樹と一九八〇年代』(共編著、おうふう、2008年11月)
日本の現代文学の中でもっとも多くの読者を獲得している村上春樹作品ですが、勝手な言説が流れていることが多く、まだ本格的な研究が進んでいるとは言えません。そこで、村上春樹出発からの10年間の作品を対象とし、それこど80年代生まれの気鋭の研究者を含めた19人で徹底分析した本です。短編を含めた各作品の研究史も併録しています。
『村上春樹と一九九〇年代』(共編著、おうふう、2012年5月)
前著『村上春樹と一九八〇年代』に続いて、村上春樹の1990年代の作品を19人で考察しました。村上春樹にとっての1990年代とは、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件といった、村上春樹の転機となる重要な事件の起こった時代でした。そのような時代背景の中で、村上春樹が何に取り組み、その作風がどのように変化していったのかを徹底分析しました。前著に続いて、短編を含めた各作品の研究史も併録しています。
『テレビドラマを学問する』(単著、中央大学出版部、2012年8月)
テレビドラマはこれまで、小説・演劇・映画などに比べて、個々の作品が本格的な批評の対象になることはあまりありませんでした。しかし、テレビドラマには「通俗」「娯楽」にとどまらない、さまざまな可能性が含まれています。本書は、スポ根・必殺もの・学園ドラマから岡田惠和・野島伸司作品、さらには韓国ドラマの流行や『仁―JIN―』『家政婦のミタ』のヒットに至るまでを徹底的に分析。テレビドラマの歴史と現在、魅力と意義を解明したテレビドラマの総合的入門研究書です。
(→ 『テレビドラマを学問する』 )
『村上春樹と二十一世紀』(共編著、おうふう、2016年9月)
前著『村上春樹と一九八〇年代』『村上春樹と一九九〇年代』に続いて、村上春樹の2000年以降の作品を18人で考察しました。村上春樹は、2000年以降世界的に評価され、諸外国の文学賞を次々に受賞していきました。現在も、小説だけではなく、翻訳、エッセイなど多方面で執筆を続けています。そのような世界的な作家となった村上春樹の最新の状況までを徹底分析しました。これまでの2冊同様、長編・短編を含めた各作品の研究史も併録しています。
『尾崎紅葉事典』(共編著、翰林書房、2020年10月)
『金色夜叉』などで知られる明治の作家・尾崎紅葉は、当時は知らない人のいない大作家でしたが、現在一般に読まれることが少なく、研究も減ってきました。それにともない資料的にも入手が難しくなっていますし、まとまった事典が編まれることもありませんでした。おそらくこの本が、最初で最後の尾崎紅葉事典になることと思います。山田有策・木谷喜美枝・市川紘美・大屋幸世との共編著です。