動画から学ぶ
生態系管理にまつわる各地の活動紹介動画や、当委員会の制作した動画コンテンツをご覧になれます。
生態系管理動画アーカイブのページへ
書籍・文献から学ぶ
委員会メンバーがおススメする、生態系管理にまつわる書籍や文献をレビュー付きで紹介します。
現場ですぐに役立つ知識から、生態学的理論の解説、深く考えさせられる哲学的なものまで取り揃えています。
みなさんの活動にお役に立てれれば幸いです。
はじめて生態系管理を学ぶ方むけ
著者が「オイカワ丸」こと中島淳さん、画が「映像研には手を出すな」の大童澄瞳さんというだけで、購入する価値はありますが、中身も秀逸です。
「はじめの知識」という序章があり、専門用語や基本的な知識が、わかりやすく説明されています。わかりやすくすると、学術的に重要な項目が省略されたりしがちですが、とても誠実に説明されています。
さまざまな種類のビオトープの作り方、実例やQ&Aなどがあり、実践したくなる内容になっています。また、注意すべき外来種、生き物図鑑、最強ビオトープなど、役立つ情報が満載です。
文字のサイズが大きく、行間が広く、イラストや写真も多くて、最後まで読みやすくなるように工夫されています。初学者向きとしましたが、幅広い方にお薦めできる本です。 (大野ゆかり)
「ハナバチ」のための環境作りが書かれているガイドラインになります。ハナバチは、花の蜜や花粉だけを食糧とする蜂のことです。ハナバチは、日本ではあまり注目されていませんが、北アメリカやヨーロッパでは、ハナバチ類の減少が報告され、さまざまな保全活動が行われています。
ガイドラインでは、日本に生息するハナバチ、ハナバチが好む花、好む花の育て方、ハナバチに配慮した農業について、簡単に紹介しています。
特定の生き物の保全の話なので、生態系管理ではありませんが、ハナバチの保全は他の昆虫の保全につながることも多いため、参考になる部分はあると思います。また、フリーダウンロードで、非営利目的の使用や再配布については、制限はありません。
(大野ゆかり)
すっかりグローバル文明の恩恵に浸っている私たちの暮らし,それの裏側で,どのようなことが起こっているのかを,林業を通して丹念に読み解いているのが本書になります。古代から現代まで,実例を通して,森と人間の関りの歴史を読み解くことによって,文明が森を食いつぶし,一時の繁栄を得て,衰退していったかを迫力をもって感じることができます。
著者はイギリス出身のエコノミストであり,長くFAOで林業政策に関わってきました。退職後,難病と闘いながら遺作として本書を執筆されたと書かれています。1980年代に刊行された本ですが,林業を通して,グローバル文明の実態と課題を明らかにし,これから何が必要かを提起しており,現在でも色あせない現状分析と課題解決の方向性を指し示しています。
森林が破壊されていく原因として,単純に人口の増加だけではなく,人間が虚栄心を満たすためにより多くの富を求める社会システムこそが最大の原因である,との一貫した主張は,これからの時代を考える上で大きな手掛かりになると思われます。
また,古代より森林には,民衆の共有地としての慣行的利用権があったこと,それが近代化によって奪われ,民衆のさらなる貧困化を招いた,との鋭い指摘もあります。著者は,すべての人にとって森林が必要であり,人間の共有財産としての森林を取り戻す「社会林業」を提唱しており,これからを考える上で大切な提言になると思われます。(佐々木章晴)
2020年初頭からの新型コロナウイルスの流行によって,グローバル文明がいかに脆弱かを思い知ることになりました。毎日を「お祭り」にすることによる「内需拡大」という経済の仕組みが,何らかの災害によって寸断されると,一夜にして崩れて,元に戻らない,そのことを学ぶこととなりました。
本書は,「大江戸○○事情」シリーズで多くの本を執筆されている石川英輔氏による,SF小説です。1998年に第1版が発行されています。2025年の現在から20年以上前に執筆された本ですが,著者の鋭い観察と工学者としての具体的数値による分析と指摘は,2025年でも十分通用します。
本書の舞台は,ほとんど江戸時代(となりのトトロの世界と言ったほうが良いかもしれません)に戻ってしまった2050年の日本です。石油で動く機械はごく少なくなり,インターネットも崩壊しています。主要産業は農業となり,人口のほとんどが自給農民です。なぜ,グローバル文明が崩壊していったか,それを中堅部品メーカーの技術者だった「本山老人」の回想によってたどることができます。
グローバル文明はきらびやかな世界です。それが徐々に崩壊していく過程は,「文明の後退」そのものに見えます。きらびやかな世界の基盤は,石油によって肥大化した社会が土地を食いつぶすことであったことを,改めて知ることになります。同時に「文明の後退」が決して悪いことだけではないことを,本山老人の語りを聞く若者たちから感じることができます。これからの「後退の時代」をどのように生きていくか,示唆に富む本だと思われます。(佐々木章晴)
より詳しく生態系管理を学びたい方むけ
現場での自然再生やグリーンインフラの導入・実践にあたって、生態学者が大切にしたい学術的な背景や理論が、網羅的かつ分野横断的にまとめられた、大学専門課程・大学院レベルの教科書です。陸域生態系を対象に、「景観生態学」「保護区の設置」「レジリアンス」「生態系サービス」など多岐にわたるテーマを扱い、生態系を社会との相互関係の中で捉える視点も得られます。生態学にあまりなじみのない方にはやや難しく感じられるかもしれませんが、日本語で読める「生態系管理学」の全体像を体系的に学べる貴重な一冊として、第一におすすめしたい本です。 (伊藤浩二)
都市や学校、農村など身近な環境をビオトープとして捉え、生き物の生息空間を創出するための手法を、写真やイラストを交えてわかりやすく解説した一冊です。ステップバイステップで具体的な実践方法が示されており、ビオトープづくりに初めて取り組む人にも頼もしい案内役となります。特に「第4章 里地里山のビオトープ」は、まとまった面積での自然再生活動を考える際の設計・施工・管理のヒントが詰まっており、現場に役立つ内容です。残念ながら現在は絶版ですが、図書館などでぜひ手に取ってほしい、実践者にとって貴重な参考書です。 (伊藤浩二)