2025年度 生態系管理演習:
自然共生サイト見学会 開催レポート
企画の概要:
環境省が認定する「自然共生サイト」の多様性を活かしたサイト間の学びあいとネットワーク化や協働プロジェクトの創出への機運醸成を目指し、生態系管理専門委員会が中心となって以下の現地研修プログラムを開催しました。
本演習では、自然共生サイトの登録・運営に関心を持つ多様な分野の方々にご参加いただき、企業・大学・NPO・自治体それぞれの立場や強みを理解し合いながら、持続可能な連携の可能性を探りました。
参加希望者は定員35名に達し、当日は企業、大学、NPOなど多様な分野からの参加があり、現地見学と関係者からの話題提供、参加者同士の意見交換等で活発な意見が交わされました。
開催日時:2026年3月16日月曜日 9:30−16:30
定員:35名(先着順)
場所:パナソニック共存の森、龍谷大学龍谷の森(いずれも滋賀県内の自然共生サイト)
参加費:5,000円(保険代・バス代等)
主催:日本生態学会生態系管理専門委員会
協力:特定非営利活動法人ochibo、パナソニック株式会社、龍谷大学、滋賀県
スケジュール:
9:30 JR南草津駅出発 ※大型バスにて移動
10:00 パナソニック・共存の森
レクチャー(パナソニック株式会社:中野 隆弘氏)
現地見学
12:30 龍谷大学・龍谷の森
昼食(各自持参)
現地見学案内:龍谷大学 谷垣 岳人准教授
14:30 交流会
話題提供①谷垣 岳人先生(龍谷大学)「龍谷の森での活動紹介」
話題提供②武馬 弘幸氏(滋賀県琵琶湖環境部自然環境保全課)「しがNPNについて」
参加者同士の交流時間
16:30 解散(JR南草津駅)
各講演の要旨:
創業者の思いに基づき、地域の自然環境を尊重した工場緑地として整備を実施。2023年からは自然共生サイトの取得に向けた活動を本格化。約1.3ヘクタールの森は、工場の雨水排水管理(有水地)としての機能を持ちながら、琵琶湖と周辺の山々を結ぶ「エコロジカルネットワーク」の中継地として機能。これまでに、草津市内で確認される生き物の約3割に相当する840種が確認。専門業者の協力を得つつ、社内の担当者が「選択的除草」や除伐を行い、植生を管理。活動は直接の利益を生むものではないが、年間500〜600名規模の環境学習の場として活用されるなど、地域社会との共生や企業の信頼性向上に寄与。
京都大学時代の連続講座をきっかけに、パナソニックとの共同研究が始まる。空中のDNAを分析してキノコ(菌類)の多様性を調査する「非破壊的」かつ「市民科学的」な手法を開発・実践。単なる調査委託ではなく、専門家と共に生物多様性保全の構成や具体的な活動内容を対等な立場で議論できる「場(プラットフォーム)」を構築できる点、研究者がハブとなり、企業、地域、行政、博物館などを繋ぐ役割を果たすことの重要性が示された。
龍谷の森は1995年に運動場建設予定地として購入されたが、教職員の6割による反対署名と、絶滅危惧種(オオタカ等)の発見により、大学が「森として守る」決断を下す。
「里山保全の会」を立ち上げ、市民、教職員、学生が共に、薪作りや椎茸栽培などの緩やかな活動を継続。学生にとっては「木を切ることは悪」という先入観を脱し、手入れが森の再生に繋がる里山の仕組みを学ぶ教育の場となっている。
国内の大学で初めて「ネイチャーポジティブ宣言」を出し、自然共生サイトにも認定された。そのモデルは台湾の先住民による森林管理の支援にも活用されている。
県の戦略目標「生物多様性しが戦略2024」に基づき、2030年までのネイチャーポジティブ実現を目指す。滋賀県は既に陸域の41%が保護地域、さらに「琵琶湖プラス30%」という独自の野心的な目標を掲げる。
ネットワーク(しがNPN)が 2023年8月に設立され、現在32の主体(企業、金融機関、大学、行政)が参加。点在する活動を繋ぎ、情報の共有や連携を強化することを目的としている。滋賀の強みとして、琵琶湖博物館の学芸員が現場に赴き、企業等へ専門的なアドバイスを行う体制。今後は滋賀銀行などの金融機関と連携し、中小企業の保全活動を支援するインセンティブ(融資制度)の構築を行う。
アンケートの集計:(回答者=9名)
5段階評価の5(最高)を88.9%(8名)の方からいただきました。
担当者の感想:
企業の生の苦労や歴史を直接学べたことが非常に高く評価されました。
今後の演習への要望として、実務的な申請・管理プロセスの深掘り(資金面やモニタリング手法等)や、参加者同士の交流時間の拡充を求める声が目立ちました。
また、行政・NPOを含む多様なモデルケースの見学、間伐等の具体的な管理技術、および活動価値の科学的な可視化への関心が高いことがわかりました。