伝記を読む

11月30日。5年2組の教室に行くと、国語科で伝記「やなせたかし -アンパンマンの勇気」を学習していました。

この伝記は梯 久美子(かけはし くみこ)さんが書かれた作品で、わたしも教科書を借りて初めて読みました。

やなせさんは東日本大震災から数日たったときに、テレビで「アンパンマンマーチ」に合わせて避難所の子どもたちが大合唱している姿を目にします。そのときすでに92歳。
「ぼくも、何かできることをしなければ。」
と力を奮い起こした……という書き出しに続けて、本人の誕生からの生い立ちが綴られています。この日は、そんなやなせさんの生涯を追うところから学習していました。

伝記に共通するのは、その人の人生の中にあった「美しい生き方」が描かれていることです。それは読者によって違っていてもかまいません。なぜなら、読者(学校では子どもです)の体験によって、感じるところは違ってくるからです。わたし(校長)が一読者として心を動かされたのは、作品の後半部に書かれている次の件(くだり)。

時間がたつにつれて、被災した人たちの様子が新聞やテレビで伝えられるようになった。寒い中で水や食べ物の列にきちんとならび「お先にどうぞ。」とゆずり合う人たち。肉親や友人をなくし、どんなにかつらいはずなのに、みんな、たがいにはげまし合い、助け合っている。悲しみを心にしまって、他の人たちのために一生けんめい働いている人も大勢いた。こういう人たちこそが、本当のヒーローだとたかしは思った。

わたしは東日本大震災が起きてから二ヶ月ほど経ってから、宮城県の多賀城市に2週間ほど復興支援に行きました。そこで目にしたのは、まさにこのような風景でした。

子どもがこの伝記で何を感じ、考えるかは分かりません。ただ、梯さんが書いた「美しい生き方」を自分なりに読み取ってほしいと願いながら教室を後にしました。

登録日: 2021年11月30日 / 更新日: 2021年11月30日