『日本語教員試験 応用試験読解 解ける500問』の読者のみなさまへ
本書へのご質問と先生方からのご回答を以下に記載しますので、ご参照ください。
また、質問に対するご回答のあとに、「お詫びと訂正」を掲載しています。
目次
問題をご担当された先生と監修の坂本正先生からのご回答になります。
市民講座の講義理解ということであれば、すべての学習者に関わりうることであり、JSPではなくJGPも捉えられるように思います。また、国内で行えばJSLになりますし、海外で行えばJFLにもなりうるかと思います。この点、「最も適当なもの」ということで、他の用語と対比して考えるということなのかと思いますが、少しトリッキーな問題かと感じました。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。確かに、「市民講座の講義理解」の部分だけを見れば、JGPと捉えることもできるかと思います。ただ、<資料1>のコース目標に「日本語で講義を理解することができる」、「社会的な内容について、発表やディスカッションをすることができる」、「レポートや論文を書くことができる」とあり、これらを踏まえて考えると、やはりJSPが適切ではないかと考えます。また、JSLとJFLに関しては、国内の日本語教育、そして、海外での日本語教育と、大きな括りなので、なんでも入ってしまい、絞り切れません。そのため、おっしゃるように「最も適当なもの」という点から、正答から外すことができると考えます。次回以降参考にさせていただき、分かりやすい問題作成に努めたいと思います。この度は本当にご質問ありがとうございました。
選択肢2に「グループ2(下一段活用)」とあります。これが正答とのことですが、一般にグループ2には上一段活用も入るかと思いますがいかがでしょうか。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。ご指摘いただきありがとうございます。おっしゃる通り、グループ2には「上一段活用と下一段活用」の両方が入ります。不注意により、不正確な情報になっておりましたこと、お詫び申し上げます。今後は、ご指摘いただいた内容を反映し、「グループ2(上一段活用・下一段活用)」と増刷時に修正したいと思います。重大なご指摘をいただき、ありとうございました。
問題文の<資料1>の説明では、「回数:全6回(対面、オンライン(zoom))」とあります。
問1の選択肢は以下の4つで、解答・解説を見ますと正解は4になっています。
1. 学習者が好きな時間に受講できるオンデマンド型授業
2. 教師と学習者がリアルタイムでやり取りする同期型授業
3. 講義内容が事前に録画、編集できる非同期型授業
4. リアルタイムでの授業と自分のペースで進める学習活動を組み合わせるハイブリッド型授業
一方問3の問題で、「zoom」についての説明の選択肢としては以下の4つで、正解は4になっています。
1.学習者が好きな時間に視聴できる動画配信システム
2.学習者が自分のペースで学習できるeラーニングシステム
3.教材や課題を配布・提出できる学習管理システム
4.リアルタイムで双方向のやり取りができるウェブ会議システム
授業形式が「対面「と「eラーニング」の組み合わせであれば問1の正解は4になると思いますが、「対面」と「zoom」を使ったリアルタイムのオンライン授業との組み合わせということであれば、問1の正解は2となるのではないでしょうか?
また、「zoom」(リアルタイムでの双方向のやり取りができるウェブ会議システム)を使った授業の場合なのであれば、問2の以下の選択肢のどれも当てはまらなくなるのではないでしょうか?
1.遠隔地にいる学習者でも、時差の影響を受けずに学習を進められる。
2.学習者は好きな時間に課題に取り組める。
3.教師のICTスキルに関係なく、録画した授業動画を繰り返し使用できるため、教師の負担を軽減できる。
4.直接指導と自律学習を効果的に組み合わせることで、学習効果を最大化できる。
まとめますと、
(1)「対面」と「zoom」の場合
問1の正解は2
問2は正解なし
問3の正解は4
(2)「対面」と「eラーニング」の場合
問1の正解は4
問2の正解は4
問3は問題文が「zoom」の説明ではなく何某かの「eラーニング」システムの説明を求める問題になり、正解は2
になるのではないかと思いましたが、いかがでしょうか?
【ご回答】
ご指摘、ご質問ありがとうございます。
本問題では、〈資料2〉4回目の授業を含む全体を、対面での直接指導とICTを活用した個別オンライン活動を組み合わせた授業(ハイブリッド型授業)として想定しています。
ここでの「Zoom」は、学習者全員が同時に参加する“同期型授業”の場としてではなく、個々の作業や相談・確認のために活用されるオンライン環境を想定しています。
つまり、学習者は自分のペースで発表原稿やスライドを作成しながら、必要に応じて教員や他の学習者とZoomを通じてやり取りを行う設計です。このように、「Zoom」をリアルタイムの授業ツールというよりも、ハイブリッド型授業における学習支援のためのICTツールとして位置づけているため、問1~3の正答はいずれも4としています。
正解は4となっているが、1も正解になり得ないか。
拘束形態素には「意味をもたない」が文法機能を持つもの(例;食べる)も存在するから。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。拘束形態素は、単独では使われず語彙的な意味を持たないものの、文法的な意味を持つ最小の単位です。例えば、「食べる」の「る」は非過去、「食べた」の「た」は過去を表すといったように、単語に文法的な機能や意味を付与する役割を担います。
正解は3となっているが、2も正解になり得ないか。
回答者が「『辛さ』と『辛み』」の(狭い)比較ではなく、広い「語彙」の適用をイメージして(例;「苦さ」「渋さ」)しまう可能性があるから。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。ご指摘の通り、「苦さ」と「苦み」、「渋さ」と「渋み」のように、「〜さ」 や 「〜み」 は味以外の表現にも使われます。しかし、選択肢2はあくまで「辛い」という語に限定して説明しているため、不適切な内容ではありません。したがって、不適切な選択肢は、接尾辞の性質を一般的に説明している選択肢3のみとなります。
選択肢2は正解とは言えないのでは
助詞は拘束形態素だと断定できないのでは。助詞は語内部に組み込まれないため、接辞的な拘束形態素ではなく、統語的な機能語とみなすのが一般的では。
せめて、「拘束形態素的な要素が強く」と記述すべきでは。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。
助詞を拘束形態素だと断定することには一定の妥当性があると考えられます。助詞は品詞分類では機能語とされますが、形態素レベルの分析においては、単独で文中に現れることがなく、常に他の語に付属して働くため、拘束形態素に分類されるのが一般的です。
日本語学や言語学の文献においても、助詞を拘束形態素の一例として挙げているものが多く、他の語に付着して文法的な機能や話し手の意図を付与する要素として理解されています。
ただし、助詞が接辞に比べて典型的な拘束形態素らしさを備えていないため、入門書の中には助詞に関して触れていないものもあり、分類や定義が必ずしも一致していない状況もあります。しかし、助詞を自由形態素としている文献は見当たりません。
以上の点から、助詞は拘束形態素であるという考え方が一般的であると判断いたします。
【参考文献】
高見澤孟他(1997)『初めての日本語教育[基本用語辞典]』凡人社
森山卓郎・安達太郎(2007)『基礎日本語学』三省堂
荻野滋夫(2014)『日本語学入門』くろしお出版
『日本語学大辞典』大修館書店, 2001年
選択肢1には「非言語コミは、・・・聴覚的要素を持つもの」と記述され、さらに解説にはその例としてイントネーションや声のトーンが述べられているが、聴覚的要素をもつもの(イントネーションやトーン)を非言語コミに分類しない考え方もあるのでは。また、受験生は普通「非言語コミュニケーション」と「非言語情報」の違いまで認識していない。さらに、市販の参考書は「イントネーション」は「非言語情報」ではなく「パラ言語」と整理しているので誤解しやすい。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。イントネーションや声のトーンは、非言語コミュニケーションに含まれると考えるのが一般的です。
非言語コミュニケーションの概念
非言語コミュニケーションとは、言葉以外のすべてのコミュニケーション手段を指す広い概念です。これには、以下の要素が含まれます。
パラ言語(paralanguage): 声のトーン、ピッチ、音量、速度、イントネーション、ため息、笑いなど、言葉そのものではない音声的要素。
視覚的要素: 顔の表情、身振り手振り(ジェスチャー)、姿勢、視線、服装など。
身体的要素: 身体接触、空間の使い方(プロクセミクス)など。
イントネーションと声のトーンの位置づけ
イントネーションや声のトーンは、上記の分類ではパラ言語に該当し、パラ言語は非言語コミュニケーションというより広い概念の一部とされています。
しかし、ご指摘のように、これらの聴覚的要素を言語システムの不可欠な一部として捉え、非言語コミュニケーションとは区別する考え方も存在します。それでも、多くの文献や議論では、イントネーションや声のトーンは非言語コミュニケーションの一部として扱われるのが一般的ですので、それに従いたいと思います。
参考文献
Hall, J. A., Horgan, T. G., & Murphy, N. A. (2019). Nonverbal Communication. Annual Review of Psychology, 70, 271-294.
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この選択肢は「不適当なもの」ではないのでは。間接ストラティジーと直接ストラティジーは、コミュニケーション・ストラテジーの分類であり、学習ストラテジーの分類ではないと考える。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。コミュニケーション・ストラテジーの分類として、「間接ストラテジー」や「直接ストラテジー」という用語は一般的ではないように思います。通常、コミュニケーション・ストラテジーは「意味交渉」の際に使われる以下のような手法を指します。確認チェック(confirmation check)、明確化要求(clarification request)、理解チェック(comprehension check)、繰り返し(repetition)、言い換え(paraphrase)、定型表現(Speech-act formulas)の使用、語彙的なマーカー(Lexical markers)/ヘッジ(Hedges)の使用、規則の過剰汎化(Overgeneralization of rules)、回避(Avoidance)、迂回(Circumlocution)/補償戦略(Compensatory strategies)、遠回しな表現(Indirectness)など。よって、これらを考えると、問5の選択肢1は「不適当なもの」となると思われます。しかし、Faerch & Kasper (1983) や Tarone (1980)で似たような概念を用いていますので、完全に間違いとは言えませんが、しかし、両者ともdirect / indirectという用語を必ずしも使ってはいません。それで、一般的な分類に照らし合わせると、問5の選択肢1は不適当なものと考えられます。
参考文献
Bialystok, E. (1990). Communication Strategies: A Psychological Analysis of Second-Language Use. Basil Blackwell.
Dörnyei, Z., & Scott, M. L. (1997). “Communication strategies in a second language: Definitions and taxonomies.” Language Learning, 47(1), 173–210.
Faerch, C., & Kasper, G. (1983). Strategies in interlanguage communication. London: Longman.
Poulisse, N. (1993). “A theoretical account of lexical communication strategies.” In R. Schreuder & B. Weltens (Eds.), The Bilingual Lexicon (pp. 157–189). John Benjamins.
Tarone, E. (1980). Communication strategies, foreigner talk, and repair in interlanguage. Language Learning, 30(2), 417–431.
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4はシュミットの気づき仮説であり、2はスエインのアウトプット仮説であることから正解を4にしていると思われるが、受験生はそこまで学問的な相違を認識していないと思われる。学問レベルの仮説検証を受験生レベルに求めるのは少し?
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。Schmidtの気づき仮説(Noticing Hypothesis)とSwainの出力仮説(Output Hypothesis)は、日本語教員に求められる重要な知識です。これらの用語は、各種検定対策本や「登録日本語教員の資格取得に係る経過措置」の現職者向け講習ビデオでも扱われています。また、大学の学部や民間の日本語教員養成講座でも一般的に教えられています。また、仮説検証の概念は、Chomskyの生成言語学や出力仮説(Output Hypothesis)の講義でも頻繁に登場する基本的な用語です。これらの理由から、これらの概念は日本語教員として不可欠な知識であると考えられます。
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正解を4としているが、ステレオタイプは個人の経験や価値観に影響を受けるものであることから、正解とは言えないのではないか。
一方、1を不正解としているが1を正解とできる可能性がある。1の記述の「つながることがある」は「つながる」とすべきだと考える。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。ステレオタイプに関するご質問について、正解は選択肢4が適切であると判断いたします。ステレオタイプはリップマン(Walter Lippmann, 1922)によって提唱された「“Pictures in our heads”(頭の中のイメージ)として社会的に構築された固定観念」です。そのため、「人によって違う」という個人的な固定観念はステレオタイプとは言えません。一方で、選択肢1の「ステレオタイプは差別や偏見につながることがある」という記述は、ステレオタイプの説明として妥当です。ステレオタイプを持つこと自体が、常に、そして即座に差別や偏見を引き起こすわけではないため、この記述は「適切でないものを選ぶ」という設問の正解にはなりません。選択肢1は適切な内容の記述として、現状のままで問題ないと判断いたします。したがって、不適切なものとしては、選択肢4が正解であると判断いたします。
【参考文献】
Walter Lippmann (1922) Public Opinion, Harcourt, Brace and Company
北村英哉・唐沢穣(2018)『偏見や差別はなぜ起こる?-心理メカニズムの解明と現象の分析』ちとせプレス
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正解を3とするが、3の記述の中の「全員」を「グループの全員」ではなく「クラスの全員」と解釈する可能性がある。選択肢を「グループの全員」と記述すべきだと考える。実際、選択肢4は「全員で確認し、すぐにグループ対話を始める」と記述されており、その可能性を示唆する。この部分も「グループで確認し、すぐに対話を始める」に改正すべきだと考える。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。下線部c「教師から課題が提示される」について、「全員」という言葉が「グループ全員」なのか「クラス全員」なのか分かりにくいとのご指摘をいただきました。ご指摘の通り、次回からは選択肢の文章をより明確な表現に修正いたします。
この問題では「クラス全員」を意図しております。教師から課題が提示される際、まず教師を含めたクラスの全員が課題について共通の理解を持つことが重要だと考えております。これにより、学習者は一人でじっくりと考える時間を持ち、その後のグループ対話の準備がスムーズに行えます。グループごとに課題を理解しようとすると、グループ間で解釈にずれが生じる可能性があります。まずクラス全員で課題を正確に理解することは、学習者の負担を軽減し、その後の学習を円滑に進める上で不可欠なステップです。そのため、スモールステップとして、このプロセスをクラス全員で行うことを選択肢3で伝えたいと考えております。
増刷時に選択肢を次のように修正したいと思います。
3 課題内容についてクラス全員で確認したら、学習者が一人でじっくり考えること。
4 課題内容についてグループで確認し、対話を始めること。
ご指摘、どうもありがとうございました。
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正解を3とするが、「感情が通い合い打ち解けた状態」はラポールの情緒的側面のみを指摘するもので、認知的側面を含んでいない。両者を含まないとラポールとは言えないのでは。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。ラポールは、心理学の分野で使われる言葉で、人と人との間に築かれる共感的な信頼関係を指します。特に教育においては、教師と学習者、または学習者同士の良好な関係性が、学習意欲や学習効果に大きく影響すると考えられています。選択肢3は、このラポールの核心である「信頼と情緒的な親密さ」を表しています。教学上、まず学習者が安心して発言や思考ができる情緒的なつながりがなければ、認知的な理解や協働は生まれにくくなります。ラポールが築かれることで、学習者は精神的な負担なく、より積極的に学習に取り組める心理的な土台が形成されるため、言語習得の認知プロセスにも良い影響を与えます。したがって、正解は選択肢3で問題ないと判断いたします。
参考文献
Hanh Thi Nguyen(2007) “Rapport Building in Language Instruction: A Microanalysis of the Multiple Resources in Teacher Talk”, Language & Education, 21(4), pp. 284-303.
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正解を2とするが、動画視聴が「理解可能なインプット」だと断定できるか?例えば、内容・レベル・補助情報により一定の条件が必要では。その動画が既知の知識に対して、わずかに難しいレベル(i+1)の言語を文脈や手がかりで理解できる状態であることの条件が必要と考えるが。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。ご指摘の通り、ただ動画を視聴するだけでは、すべての動画が「理解可能なインプット(i+1)」になるわけではありません。そのため、教師による工夫が必要です。例えば、資料2にありますように、授業内で動画を視聴した後、ペアやグループで動画のキーフレーズ、文化的な特徴、会話内容について、既知情報と未知情報を整理する活動を行うことで、動画の内容を「理解可能なインプット」に変換させます。このように、動画の視聴を単なる教材と捉えるだけでなく、多様な活動と組み合わせることで、言語習得は促されます。また、その後にロールプレイなどを行い、文脈に沿った会話練習をすることで、より意味のあるアウトプットにつながります。以上の理由から、選択肢2が正解となります。
「専門家の三位一体モデル」(館岡洋子)という理論モデルは日本語教育学の中での汎用性のあるモデル?仮にそうだとしても受験生レベルではほとんどの人が認知できていない。こうした場合、問題文中に若干そのモデルの事前説明を入れる必要があると考える。
【ご回答】
ご質問、ご指摘いただき、ありがとうございます。舘岡洋子氏による「専門性の三位一体モデル」は、日本語教師の専門性を考える上で非常に重要な枠組みです。このモデルは、「理念 × 方法 × フィールド(教育現場)」の三要素が連動し、動的に構成されるものとして捉えます。
理念: 教師自身の教育観や価値観
フィールド: 実際の教育現場の特性や背景
方法: 理念とフィールドに応じて設計される指導スタイル
このモデルでは、「方法」は固定されたものではなく、理念とフィールドに合わせて編成されるものであり、三要素が連動していることが専門的実践の核心であるとされています。このモデルは、教育実践や教師研修にも応用されており、自己省察や対話を促すツールとして活用されています。つまり、専門性とは特定のスキルを身につけることだけでなく、自身の教育観を基に現場に応じた柔軟な実践力を発揮することだと考えられています。
このモデルは、日本語教育の専門性研究や教師研修の分野では比較的知られています。教師養成課程(大学や養成講座)で「日本語教師の専門性」に関する授業や研修を受けると、このモデルに触れる機会があります。研究・研修の場ではよく出てくるけれど、現場教員全員が日常的に口にするほど一般化してはいないモデルです。教師のキャリアや研修経験によって知名度の差が大きいと言えます。ご指摘のとおり、モデルの事前説明を少し入れた方が現時点では親切だと思われます。ご指摘、ありがとうございました。そのようにいたします。
参考文献
舘岡洋子編(2021)「「専門家の三位一体モデル」の提案」『日本語教師の専門性を考える』第3部 提案編 第6章、ココ出版
NKS研究会
https://nihongokyoshi-senmonsei.com/?page_id=20&utm_source=chatgpt.com
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選択肢1を正解とするが、選択肢4も正解になる可能性がないか。「した方がいいかもしれない」については、義務や望ましさと相手への助言の二つの意味をもち、この文脈では一つに限定できないと考えるが。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。「した方がいい」を人(この問題の場合、不自然な文を作った学習者)に向かって言えば助言になり、対人的モダリティです。しかし、ここではそうではないので、対人的モダリティにはなりません。したがって、選択肢1を正解といたしました。
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解答・解説で「ありとあらゆる」をまとめて連体詞と説明しているが、あり(動詞)+と(助詞)+あらゆる(連体詞)に区分できないか。もしできなければ、せめて「連体詞的慣用句」と説明すべきでは。なお、「体質改善のために」が「問題解決のために」と誤記されている。訂正を。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。「ありとあらゆる」の品詞分類についてですが、一般的に形容詞的表現として名詞を修飾するため、連体詞として扱うのはあまり一般的ではないようです。また、慣用句とするか連体詞的連語とするかについても、見解に揺れが見られます。そのため、より明確で一般的な表現である「あらゆる」に変更することが適切であると判断いたします。ご指摘、ありがとうございました。
p.237 問題16 問5の解説は「体質改善のために」が正しいです。ご指摘ありがとうございます。
【誤】問題解決 → 【正】体質改善
「ありとあらゆる」→「あらゆる」に変更
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正解を4とするが、「意見の微妙なニュアンスを表現するために、音調を変えたり該当箇所を強調すること」は「談話能力」に含まれると考える。それは、韻律的特徴(プロソディ)であり、談話能力には単なる文の構成や意味のつながりだけでなく、音声的手がかりによる情報構造の提示やニュアンス表現も含むのでは。むしろ、正解は3ではないか。選択肢3では、「その場の状況や話し手に応じて」と記述されており、その点で「社会言語学的能力」と確信されるから。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。談話能力と社会言語学的能力は、どちらもコミュニケーション能力(伝達能力)を構成する重要な要素であり、密接に関連しています。以下、一般的な定義を書きますと、談話能力(Discourse Competence)は、単に個々の文を並べるだけでなく、それらを適切につなぎ合わせてまとまった段落にし、さらにそれらの段落(複段落)を適切な順序で表現する能力を指します。「日本語教育の参照枠(報告)」(2021)やCEFR随伴版(2024)でも、文を配列する能力であるとしています。一方、社会言語学的能力(Sociolinguistic Competence)は、コミュニケーションの各場面において、さまざまな社会的要因(例:誰に、どこで、何について話すかなど)を考慮し、それに合わせて言語(語彙、文法、音声など)を適切に使う能力です。この能力には、会話の切り出し方といった言語的な対応だけでなく、動作や表情などの非言語的な対応も含まれます。
以上のことを考慮しますと、談話能力の例として、選択肢4の「音調を変化させたり、該当箇所を強調すること」が談話を構成する上で役割を担う面もないわけではありませんが、上の一般的な定義から考えると、ちょっとここでは談話能力の例としては不適当な選択肢になると思います。選択肢3の「その場の状況や話し相手に応じて、内容や話し方を調節することができる」というのは、「談話管理能力」で、これは談話能力と言ってよいように思います。そのため、選択肢3は不適当な選択肢としては選べず、試験問題としては選択肢4を正解としたいと思います。選択肢3と4、ちょっと紛らわしいので、次回改訂時により明確に正解が導き出せるような修正を検討したいと思います。鋭いご指摘、ありがとうございました。
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編集上、「やさしめの問題」にカテゴリーするべきと考える。
【ご回答】
ご質問ありがとうございます。問題のレベルの判定はなかなか難しくて、何か確固とした客観的な基準があって、分けているわけではなく、多分に主観的なものが入ってしまいます。ご指摘ありがとうございました。将来的な課題とさせていただきます。
p.76 上から12行目 問題10 問3 選択肢2
誤:グループ2(下一段活用)
正:グループ2(上一段活用・下一段活用)
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p.85 上から5行目 問題16 問2 問題文
誤:「複文構造」として
正:「複文構造」の例文として
(4刷修正済み)
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p.188 上から14行目 15行目 問題6 問3
選択肢3
誤:全員で
正:クラス全員で
選択肢4
誤:全員で確認し、すぐにグループ対話を
正:グループで確認し、すぐに対話を
(4刷修正済み)
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p.210 下から8行目と4行目 問題15 問3
選択肢1と3
誤:ベトネム語
正:ベトナム語
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p.228 左段上から13行目 問題6 問2 解説
誤:池田玲
正:池田玲子
(4刷修正済み)
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p.237 左段上から15行目 問題16 問5 解説
誤:問題解決
正:体質改善
(4刷修正済み)