芸術・文化談義コミュニティ

名城大学 学びのコミュニティ 人間学部
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このサイトは、名城大学の学生のみなさんが参加し交流できるよう、芸術文化談義コミュニティの情報やみなさんからのコメントを紹介していきます。

芸術文化談義

2023年度 映画鑑賞会 ご案内

本年度も映画鑑賞会を開催します

木曜日の4限から、月1回のペースで実施します。学生のみなさん、気軽に参加してください。

後期の予定

10月5日(木) 14:50~ 場所 DW305

映画「ブラック・クランズマン」

11月16日(木) 14:40~ 場所 DW207

映画「マーガレット・サッチャー鉄の女の涙」

12月7日(木)16:00~ 場所 DW207

映画「遠い夜明け」

10月5日(木)14:50~

場所:DW305

ブラック・クランズマン
(アメリカ映画 2018年)

スパイク・リー監督作品

人種差別を扱った映画です(実話)

11月16日(木)14:40~

場所DW207

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

(イギリス映画2011年)

イギリス初の女性首相マーガレット・サッチャーの半生

12月7日(木)14:50~

場所DW707

遠い夜明け

(アメリカ映画1987年)

アパルトヘイト時代の南アフリカ。黒人運動家と白人ジャーナリストの友情を描く(実話)。人種差別廃止に導くのは人びとのアイデンティティの確立にある。

5月18日(木)
パリのランデブー(待合せ)

フランス映画 1995年

パリを舞台にした3つの男女の物語(大学生中心)。コミカルなところもあるので、気軽に観て、フランス映画を感じてください。

フランス ヌーベルヴァーグの巨匠エリック・ロメール監督作品 

6月29日(木)14:45~

ゴヤの名画と優しい泥棒

2022年 イギリス 上映時間95分

1961年にナショナル・ギャラリーで起きた、ゴヤの絵画「ウエリントン公爵」盗難事件。実話がコメディタッチで描かれ、感動的です。

7月13日(木) 14:50~

椿三十郎

1962年 日本 上映時間96分

世界から高い評価を得た巨匠 黒澤明監督、主演 三船敏郎でおくる時代劇。最後の「あばよ」、いいです。

談義のコーナー

第1回鑑賞会 鑑賞作品「パリのランデブー」(5月18日開催)

 ヌーベル・ヴァーグの巨匠エリック・ロメール監督による1995年の作品です。昨年度の「クレールの膝」が1970年の作品でしたので、ちょうど15年後の作品になります。といっても、30年近く前の作品ですので、学生のみなさんには古い映画と感じることでしょう。しかし、舞台となるパリの風景は、今と大きく変わっていません。東京の1995年と2023年では街の風景が大きく異なっていますが、パリももちろん変わっているところはあるものの、大きくは変わっていないです。石造りの建物文化であるとか、パリの街並み自体が文化的価値があるとみなされていることが影響しているのでしょう。この映画をみて、パリに行っても、映画で出てき風景だ、と感じることができると思います。

学生のみなさんより

街並みがキレイと古さと懐かしさが混じっていて素敵だった。


 さて、エリック・ロメールは、「偶然」ということをとても大事にします。もちろん、映画のシナリオがあるお話ですので本当の意味で偶然でないのですが、もし現実で我われは「偶然」にであったとしても、「偶然」ゆえに「偶然だから」と気にとめないことがるかと思います、しかし、実はそうした「偶然」が人びとが生きていく上で方向付けを与えることがあるということをロメールは示します。ロメールのメッセージの1つとして、そうした「偶然」に翻弄されないよう、人びとは「偶然」を学ぶことで「教訓」を得ることができるのだよいうことがあります。では、この映画の偶然と教訓、学生のみなさんは、とらえることができたでしょうか?

学生のみなさんより、

・「最初のストーリー「7時のランデブー」ラストの修羅場になるシーンが面白かった。ナンパした男がカフェに来るタイミングが完璧だった。」(「パリのランデブー」は3つのストーリーから構成されています。)

 まさに、偶然に注目してくれました。

愛を表現するには言葉が必須だが、それぞれ解釈が違うから難しい。

 これにも、偶然という要素があるのではないでしょうか? パソコンやスマホに打ち込む命令は決まった指示しかパソコンやスマホに与えませんが、人間同士のやりとりでは、1つの言葉によって決まった指示がなされるわけで必ずしもはないですよね。

嘘をついていた人が全員痛い目にあっていたので嘘をついてはいけないと思った。

相当相手に心を許していないとどんな状況・感情の時にも一緒にはいられないと思った。

 これらは教訓ですね。

登場人物にわりと自己中心的な人が多くて、それが恋愛の駆け引きなのかよくわからなかった。フランスではそれが普通のやりとりなのなら人と話すときに疑いを持ってしまうかもしれない。

 これも教訓かもしれませんね。確かに自分を主張する傾向は、日本より強いと思います。でも、相手から発せられた突拍子もない提案に戸惑う姿をみると、これも広くいえば偶然でしょう。相手から言われた方にとっては、ですが。駆け引きは、何か目的があってすることではないかと思うのですが、突拍子もない提案は目的があってのことなのか、それはわかりませんね。


 全体のストーリーについては、どうでしょうか?

学生のみなさんより

3話ともにハッピーエンドかと思っていたのに、誰も幸せになった人がいないのが印象に残った。

どの男女もその後が気になった。

BGMがなく、物語が淡々と描かれていてドキュメンタリーみたいだ。

全体的にドロドロしていた。しかし人間を変に美化したり抽象化せずに描いていた点は良いと思った。

 フランス映画、あるいはヨーロッパ映画、こういうスタイルが結構あります。映画を、過度に夢物語にしないのですよね。もちろんみなさんの中には、映画はお話なんだから、夢物語のほうがいい、という意見もあるかもしれません。でも、人間を描くという課題を求めた結果のスタイルなのですよね。


第2回鑑賞会 鑑賞作品「ゴヤの名画と優しい泥棒」(6月29日開催)

 ローメル作品に比べれば、みなさんがとっつきやすい作品ではなかったかと思います。作品の舞台は1961年と昔の話なのですが、2022年に公開された映画ですので、映像は新しいです。この作品も人間性が中心のテーマです。そこに社会が加わります。人間と社会、それがこの作品のテーマだと思います。

では、まず人間性から

学生のみなさんより

・ なんでも話し合って本当の事を言うことで家族関係を修復し絆が生まれるというところに感動した。

 重要なことに気がついてくれましたね。現在重視されているコミュニケーションとは、表面的にうまく付き合う、付き合い方のテクニックだと思います。本来追求すべきコミュニケーションとは、本当のことを言って話し合えるような関係を築くことではないでしょうか。本当のことを言うには勇気と寛容さが求めれると思います。その両方を養う場が、まず家族でしょう。そして次に社会になるのではないでしょうか? 

・「私はあなた。あなたは私。」という言葉が主人公の人柄を表していて深いと思った。

 このことも大切ですね。相手のことを自分のこととして考えてみる、寛容さにつながる言葉ではないでしょうか。

・イタリア人が盗人扱いされていたこと、パキスタン人差別に抗議したイギリス人が不遇を被ったことといったイギリス社会の側面を知ることできた。

 こうしたシーンから、作品が社会の不寛容さを訴えたいということが分かると思います。

・同じ監督作品の「ノッティングヒルの恋人」より面白かった。

 「ノッティングヒルの恋人」はエンターテイメント性の高い作品だと思いますが、この作品は別の趣がありますよね。そこに気がついてくれたこと、よかったと思います。


第3回鑑賞会 鑑賞作品「椿三十郎」 (7月13日開催)

 海外から評価された日本映画といえば、昨年度鑑賞した小津作品と、そして黒澤作品でしょう。その黒澤作品の中でも、比較的みやすい作品がこの椿三十郎です。時代劇をみる機会自体が、学生のみなさんには少ないと思います。古い映画ですので、今の映画に比べるとスピード感に欠けるかもしれません。でも、人間のかかわりって、今みたいにSNSを通じて一瞬でつながることばかりではないと思うのですよね。そうしたゆっくりとしたつながりが、義理人情をうみだしているのかもしれませんね。さて、学生のみなさんはどのように感じたのでしょうか?

学生のみなさんより

・黒澤映画を見るのは初めてだった。ストーリーや画づくりは想像していたよりもシンプルで見やすかった。

・古い日本映画をあまり観ないので新鮮だった。普段は洋画ばかりなので、邦画の義理人情というか浪漫というか、男として格好良いと感じた。

 なかなか、好印象だったようですね。

・ゆったりと話が進んでいったので、登場人物に感情移入しづらかった。

 今と違いますから、違和感があったみなさんもいますよね。

・髭を触る仕草がよくあり印象に残った。

 髭って、最近はあまり伸ばさないですよね。場所が同じでも、時代が変われば文化も変わりますよね。

・加山雄三がめちゃくちゃ若くてびっくりした。用心棒の時とは違って三十郎が尊敬される師匠のような存在になっていて面白かった。抜刀のシーンは本当に凄かった。

 黒澤映画、みていますね。

では、後期も開催します。学生のみなさん、どうぞ参加してください。


第4回鑑賞会 鑑賞作品「ブラック・クランズマン」(10月5日開催)

 人種差別を描いた映画監督の中で、スパイク・リーは最も有名な監督の一人と言えるでしょう。そのリー監督の比較的最近の作品である「ブラック・クランズマン」を鑑賞しました。リー監督は、人種差別というシリアスな社会問題を扱いつつも、どことなくユーモアを交え、視聴者を惹きつけます、この作品も、警察による潜入捜査を通して、単に黒人差別のみならず、ユダヤ人差別も含まれ、社会にはびこる差別の姿を実話を元に描いています。

学生のみなさんより

はい、警察でも例外ではありません。社会全体にはびこっているわけですから、複雑ですよね。

言葉は生きものです。語学の教科書どおりにしゃべられているわけではないのですよね。こういうのを社会言語といいます。興味をもつと面白いですよ。

そうですね。難しいけど、歩み寄らなければ、前に進みませんよね。いいですね。


第5回鑑賞会 鑑賞作品「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(11月16日開催)

 今回の作品は学生のみなさんからリクエストのあった作品です。イギリス初の女性首相として1979年から1990年まで首相を務めたマーガレット・サッチャー。鉄の女とのあだ名をつけられますが、それはまさにサッチャーの政治スタイルそのものです。停滞気味であったイギリスが、サッチャーの強気でどんどん引っ張られていく様が描かれていきます。その一方でサッチャーの人間性として、伴侶からの支えや子ども達の大切さも描かれています。それでも、サッチャーは、あくまで揺るぎない信念を貫く人物であり、人間味溢れた人物としては描かれていなかったですね。今の学生のみなさんには過去の人でしょうが、どのように映ったのでしょうか?

学生のみなさんより

 そうですね。ぶれなかったですよね。

確かに、伴侶は亡霊として出てくるのですが、時には繊細でした。

よく観ていますね。私はサッチャーの政策に諸手をあげて同意することはできないのですが、立場による難しさはあったのではないかと思います。


第6回鑑賞会 鑑賞作品「遠い夜明け」(12月21日開催)

 今年度、そして芸術・文化談義、最後の映画鑑賞会になります。最後に、というわけではありませんが、南アフリカのアパルトヘイトを扱った名作「遠い夜明け」(1987年)を鑑賞しました。2時間半を超える長編映画ですが、30年以上経った今でも訴えてくるものが多い作品です。では、学生のみなさん、どう感じたのでしょうか。

学生のみなさんより

 よく観てくれていますね。「アフリカのテーブルに堂々と座りたい」は、この映画のハイライトにあたるシーンだと思います。表向きは受け入れても、それでは真の多様性を尊重していることにはならない、ということですよね。映画の後半は、アクション的な要素もあって、アパルトヘイトという厳しい状況の中でも、ある種の爽快感や希望を与えてくれる内容になっていたと思います。

 それでは、最後になりますが、この学びのコミュニティに参加してくれた、たくさんの学生のみなさん、どうもありがとうございました。また、先生方や事務職員の皆様のご協力に感謝申し上げます。