インボイス制度を理解していく上で、
「元請サイド(仕事を出す側)」と「外注先サイド(仕事を受ける側)」のそれぞれを分けて考えることが重要です。
今回の記事では「元請サイド(仕事を出す側)」のお話をします。
今回は例として運送業界を用いてご説明します。
外注先サイドのお話は「インボイス制度(外注先の目線から)」を合わせてご覧ください。
運送業界には大きく3者が登場します。
①元請
②委託会社
③ドライバー
上図のように元請さんが委託会社に荷物の運送を外注し、委託会社がドライバーに外注して荷物を運んでもらいます。
その外注(仕事)を完了した際には、請求書を委託会社は元請さんに、ドライバーは委託会社に発行します。
(委託会社がドライバーに替わって請求書を発行したり、支払明細書という形態をとっていることもあります)
今回の記事では、①元請と②委託会社に関して分けて説明させていただきます。
元請さんは委託会社に対して荷物の配送を依頼します。
その配送に伴うコストは「外注費」として処理することとなります。
「外注費」として支払う料金には商習慣上、消費税を上乗せしてお支払いします。
インボイス制度が始まる前(2023年9月末まで)は、
元請さんが支払う消費税額は、自身の売上に係る消費税から支払った消費税を差し引きした金額を支払います。
下図のように、元請さんが税務署に支払うべき消費税額は、
「「税務署に支払う消費税額=売上に係る消費税額➖外注費に係る消費税額」」
という計算式で計算できるので、
税務署に支払う消費税額=3万円➖1万円=2万円
となります。
インボイス制度が始まると、
委託会社がインボイスを発行してくれないと外注費に係る消費税額1万円を差し引きすることができなくなります。
つまり、税務署に支払う消費税額が3万円になってしまいます。
(委託会社が負担すべき消費税を元請さんが負担することになります)
元請さんとしては、ご自身がインボイスに対応することはもちろんのこと
外注先である委託会社がインボイス対応するように求める必要があります!
インボイスの対応方法に関しては別の記事「インボイスっていつから何すればいいの?」をご覧ください。
2では元請さんにおけるインボイス制度を説明しましたが、
委託会社におけるインボイス制度に関しても基本的には同じ影響が生じます。
しかし、異なる点が1点。
それは、
「インボイス対応をしないと元請さんから仕事を断られる=仕事がなくなる」
ということです。
元請さんからすれば、インボイス非対応の委託会社に外注すると委託会社の消費税を元請が負担することになるのであれば、
インボイス対応している委託会社だけに仕事をお願いした方が良いという意思決定をする訳です。
つまり、委託会社は積極的にインボイス登録する必要があります!
また、元請さんと同じように、ドライバーがインボイス対応していないと、
ドライバーが負担すべき消費税額を委託会社が負担することになります。
したがって、ドライバーに対してインボイス登録をお願いしていく必要が出てきます。
ドライバーにインボイス登録をお願いするときに大きな壁があります。
それは上図のように、多くのドライバーが免税事業者であることです。
インボイス登録は消費税課税事業者(消費税を申告・納税する必要がある事業者)でないとできません。
つまり、免税事業者であるドライバーは
①課税事業者になる
②インボイス登録をする
の2ステップを踏む必要があるのです。
(※免税事業者における特例が存在します。詳しくは「インボイスっていつから何すればいいの?」をご覧ください)
元請と委託会社におけるインボイス制度の影響を簡単にご説明しました。
上記内容をまとめると以下のようになります。
<元請>
①元請自身がインボイス事業者登録する
②外注先がインボイス登録しているかチェックする必要がある
(または、外注先にインボイス登録するように促す)
③外注先からちゃんとしたインボイスが発行されているかチェックする
<委託会社>
①委託会社自身がインボイス事業者登録する
②ドライバーにインボイス登録を促す
③ドライバーがインボイスが発行できるようにする/委託会社側でインボイス対応の支払明細書を作成できるようにする
今後、インボイス対応していない事業者とは取引ができなくなります!
まずはご自身から対応し、次に取引先が対応しているか確認し、していなければ登録を促していく必要があります。