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UN

徳島県木の家づくり協会 <木の家をつくる人からの手紙>より

(3)図面をひく人(建築士)

TSウッドハウス

 

UN建築研究所

根岸徳美(ねぎし・なるみ)さん

profile

東京の設計事務所勤務を経て、1993年、植村成樹氏とともに徳島に「UN建築研究所」を設立。個人住宅設計の傍ら、四国の集落や民家を調査する中で「三間角(さんげんかく)」に出会う。一辺が三間(1818mm×3)の正方形の広間を家の中央に据え、その他の玄関、浴室、トイレ、土間などを「部品」としてその周辺に自由にプラスしたり、時が経てばマイナスしたりもするという、現代版「サンゲンカク」の設計で注目されている。



家族が間取りの中で動きだすところをイメージしながら設計しています

 

TSウッドハウス地域産の材を使うようになったのは、徳島に帰ってきて設計事務所を作ってからですね。東京で仕事をしていたころは、材料をカタログで選んだり、サンプルを取り寄せたりというという選択方法だったんですが、徳島では、材料を作っている場所に行けたり、作っている人の顔が見えたりする。カタログの中でなく、地産のものにたくさん触れて、素材感に興味を持って、使い始めました。
現場とカタログでは、やはり情報量が全然違います。分からないことがあっても、作っている人に直接聞けるので、すぐに答えが返ってくる。迷ってることを相談すると、生の声で答が返ってくるので、それが設計のヒントにもなったりします。設計の立場からはとても心強いです。

徳島に帰ってからは住宅の仕事がメインです。住宅は、身近な材料を使いますよね。私は徳島にいたのは高校時代までで、行動範囲も狭かったので、徳島のことを何も知らずに県外に出て、戻ってきたときにはいろんなものがすごく新鮮に感じました。徳島の木も魅力的な材料だったし、近い範囲にいろんな職人さんもいて、いろんなことを教えてくださる。それが東京での仕事とはまったく違いました。木は生きてる材料なので、こういう場合はこう使うんだよとか、製材所の人は木取りの仕方を教えてくれたり、大工さんは良い木と悪い木の見分け方、建具屋さんも、こういう材料は将来そってくるからこう使うのがいいとか、学校で教えてくれないことを職人さんたちが教えてくださったので、仕事というより、新鮮な中で勉強できたというか、現場実習ができましたね。

私たちに「設計して欲しい」と来られる方は、木の家にするかどうかを迷っているという方より、小さい家の方が多いので、ほぼ木造というイメージを持ってこられて、その中でどういうふうにしたらいいかと考えておられる場合が多いですね。木の家の一番のよさは、私も化学物質に弱いんですが、建築現場にそういうものが一切ない。クロスもつかわずに木のあらわしなので、現場の香りもいいんですね。私はほとんどの家で杉を床板に使ってるんですけど、フローリングと違って、素材が素肌に直接触れても気持ちがいい。もちろん、私自身も木の家に住んでます。

TSウッドハウスいま、佐那河内村の、生徒数150人の中学校の校舎を設計してるんです。構造は鉄筋コンクリートなんですが、内装に木を使いました。「県行造林」と言って、県が植えている木を村の人たちに間伐してもらって床板に使う計画で、壁とか天井にも、県産材を使う計画です。

校舎に木を使おうと思ったきっかけは、住宅を設計していて家ができると、小ちゃい子がすぐに裸足になったり、床に転がったりして喜んでるんですよ。やっぱり気持ちがいいんだなと。大人のように見た目ではなくて、子どもはカラダで素材を楽しんでいる感じがしますね。そういうのを見ていて、子どもの施設に一部だけでなく、ふんだんに使いたいという気持ちがありました。

今回の学校の仕事には、地域の材料をふんだんに使うというのが一番にやりたいこととしてあったんですね。村の人たちも、他の部分ではいろんな意見もあったんですけど、木を使うことに関してはほとんど全員賛成でした。人が木に対して持ってるイメージ、はすごくいいんだなと思います。「木の学校にしたい」というと、まず反対する人はいませんね。

TSウッドハウス個人住宅を作るときに一番気を使うのは“安全”です。女性や子どもは家で過ごす時間が長いですし、構造的に強度がしっかりしているとか、山が迫っているとか川が近いといった立地にもあわせて、よりライフスタイルに合った提案をしようと考えますね。同じ家族構成の方が同じ建坪の土地を持っていても、その人がどう暮らしたいかによって家はまったく違うものになります。

私は、お施主さんが打合せの中で、はっきりとはおっしゃらないけど、ぼそぼそっと言われたことをつなげてイメージして、はっきり意識されてないけどこんなふうにしたいのでは?ということを想像しながら設計していくんです。大切なことが、住み手が意識していない部分の中にもありますしね。何度かお話する中で、ご家族がその家の中で暮らしてるところをイメージをしながら間取りを考えて提案していくので、設計にもちょっと時間がかかります。

イメージは、かなり具体的にしますね。「日曜日はこんなふうに過ごしているんだろうな」というようなことを、間取りと、敷地の条件とかを考えながらイメージしていく。小さな子どもさんがいたら、こっちから走ってきたりするんだろうなとか、この辺でごろごろ寝てるんだろうなとか、そういうふうに、間取りの中でその施主さんが動き出さないと、なかなか進まない。家族の映像が頭の中にあって、ストーリーが見えてくる感じでしょうか。そうやってイメージしていっても、できたものはシンプルだったりするんですけどね。

TSウッドハウス限られた予算の中で良いものを作りたいと頼まれるので、自然と県産材が多くなりますね。徳島の木は、素直に育ってるものが多いですね。木も100年以上生きていると、その間にすごいストレスがかかっているので、木自体にはすごい魅力があるし、構造材としてはしっかりしているんですが、歳相応の強烈な個性があって、毎日見えるところにそういう木を大きな面積で使うと、ちょっとしんどいな、くどいな、というのもあると思うんです。でも徳島の木はわりと素直なものが多くて、比較的大きな面積に使っても、住む人には優しいのではないでしょうか。やはり“適材適所”で。すくすく育ったよさを活かして。そういう話も、現場でいろんな方から教えていただいたりしますね。古い木は弱点も多くて、割れたり腐れたりもするんですけど、「若い木の倍生きてきた間に、それだけ危険な目にもあってるから仕方ないんだよ」なんて、現場の方から教えていただいたり。

最近では、木造住宅の構造材に関しては、ほぼTSウッドハウスさんにお願いしています。設計するにあたって、お施主さんの希望はなるべく叶えようとしていますが、いつまでに建てて欲しいという期限もある。そんな中で、設計期間を長く取ると、必要な木を人工乾燥する期間が短くなってしまうんですね。その点、TSウッドハウスさんには自然乾燥の構造材のストックがたくさんありますので、大枠の構造的なことが決まった時点で在庫の確認ができ、「それはないけどこれに変更したら大丈夫だ」とか、そういうやりとりができて、設計図が上がって見積もりができたら、材料をすぐに現場に送ってもらえる体制ができてるんです。私としても設計の時間が長く取れて、信頼できる材料が大工さんに渡るというのが、一番のメリットですね。構造材のストックでは、一番信頼できるところじゃないかと思っています。やはり、設計の内容だけでなく、期限の面でも、お施主さんの希望を叶えて差し上げたいですからね。

徳島県木の家づくり協会 の サイトより 転載しました。

 

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