数理科学に関連する話題を扱うセミナーです。
“*” は “ワイルドカード” で,「物理」「生物」「経済」「政治」等,なんでもけっこうです。
2~3か月に1度程度のペースで不定期に開催しております。
会場は,東京大学数理科学研究科,早稲田大学基幹理工学部,立教大学理学部の持ち回りを基本としていますが,
場所を提供いただければどこでも開催いたします。
日時:2016年6月25日(土)14:30 -- 17:00
講師:大久保 直人 氏(東大・数理科学)
佐伯 立 氏(北大・低温科学研究所)
題目:クラスター代数およびその拡張に付随する離散可積分方程式
概要:
クラスター代数はFominとZelevinskyによって導入された可換環の一種である。クラスター代数はquiver(有向グラフ)を与えることで決定され、クラスター変数と係数によって記述される。本講演ではq-パンルヴェIII,VI方程式に対応するクラスター代数を紹介する。これらのクラスター代数は、係数の満たす関係式が保存量を用いた変形によりq-パンルヴェ方程式に帰着する。また、クラスター代数の拡張としてLamとPylyavskyyによるローラン現象代数が知られている。離散BKP方程式など、クラスター代数からでは得られない離散可積分方程式がローラン現象代数から得られることを紹介する。
題目: 海氷と内部波の共鳴相互作用によるアイスバンド形成機構
冬季極域海洋氷縁には, アイスバンドと呼ばれる縞状の海氷パターン構造が分布することが知られている.アイスバンドの間隔は0.1-10kmと様々だが10kmスケールの間隔でバンドの長軸に直交する方向に等間隔に並ぶバンド構造が100km以上連なることもある. また, バンドの長軸は風向に対していくらか傾くという特徴を持つ. 本研究では, 上記のアイスバンドの持つ特徴に注目し, 以下の未解決の問題: 2)アイスバンドの発達に適した風向きはあるか?
の2点について海氷と内部波の‘共鳴相互作用’に着目して理論を構築した.まず, アイスバンド形成時の状況をモデル化するため,海氷運動と下層が静止した2層の海洋(1.5 層)の結合系を考えた.海洋の運動方程式と連続の式から,内部慣性重力波を表す発展方程式を導いた.その際, 開水面と海氷域の風応力の差のパラメータおよび風向きと海氷漂流方向の間の角度の影響を考慮し, バンド長軸方向の変化は無視した. この内部波の式と海氷密接度(海氷面積の割合)の発展方程式を連立させる.これに平面波解を代入して振動数と波数に関する3次方程式を導出した. これに対して波数と振動数の2次元平面上でバンドパターンの伝播速度が内部波の位相速度に一致する共鳴点近傍において摂動展開をおこなった. その結果,リーディングオーダーの解として, バンド幅の理論値を得ることができた. さらに次のオーダーの解としてアイスバンドの成長率が得られ, 北(南)半球では風向きに対してバンドパターンの進行方向(短軸方向)がいくらか右(左)きであることがアイスバンドの発達に効果的であることを示すことができた. 今回の発表では以上の話題を中心に海氷と内部波の相互作用による不安定成長のメカニズムの可能性を提示する. 加えて, 上記の1.5層の理論と現実的な連続成層の海洋との対応関係を明らかにするために3次元静水圧海氷-海氷結合モデルを用いた数値実験と衛星画像を使っておこなった解析結果も併せて紹介し, 連続成層下では共鳴する内部波のモードがシフトする必要があることなども紹介する予定である.
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