シンポジウムシリーズ 2  すばる望遠鏡から顕微鏡へ:
次世代三次元補償光学系を用いた生体イメージング・光操作に向けて


日時 : 2014820日(水)、21日(木)
場所 : 国立天文台 すばる棟大セミナー室       東京都三鷹市大沢21
(国立天文台・三鷹キャンパスへのアクセス:こちら , 三鷹キャンパス構内マップ : こちら)

主催:国立天文台・ハワイ観測所
共催:基礎生物学研究所・光学解析室
共催:自然科学研究機構 若手研究者による分野間連携研究プロジェクト
         「新方式波面センサーを用いた高感度補償光学系の研究と、生体観察・天体観測・プラズマ物理への新展開」(代表 服部 雅之)


【開催趣旨】

補償光学は、観測対象と計測装置との間に存在する不均一な媒質によって乱された光の波面(同位相面)を補正し、回折限界に迫る高い分解能を得る技術である。補償光学の有効性は、地上の光赤外線望遠鏡を用いた天体観測において示されてきた。わが国においては、国立天文台・ハワイ観測所のすばる望遠鏡に設置された188素子レーザーガイド星補償光学系によって、1 μmより長い波長で回折限界に近い分解能を達成している。それに加えて補償光学は媒質の不均一性によって結像性能が劣化するあらゆる測定光学系に応用できる可能性がある。特に、生体の顕微鏡観察、いわゆる生体イメージングが挙げられる。生体内には屈折率の異なる多様な構造体が混在するため、生体の内部を観察しようとすると、像が劣化してしまう。そうした屈折率分布の違いによる像劣化を補償光学によって補正することで、複雑かつ多様な生体組織の内部でも鮮明な像を得られると期待できる。


しかしながら、天体補償光学系をそのまま顕微鏡に適応しても、精細な生体イメージングが行えるわけではない。現在、補償光学によって回折限界に迫る画像が得られるのは、ガイド光源周辺の極めて狭い領域に限られている。そのため、生体イメージングにおいて一般に求められる範囲に高次の補償光学を適用するためには、揺らぎの立体情報を測定する新しい補償光学系が必要となる。これは、複数の波面センサーを用いて複数のガイド光源からの波面をそれぞれ測定し、光路上に存在する屈折率分布をトモグラフィーで三次元的に推定した上で、複数の光位相変調器や検出器を用いて、広範囲の補正を達成するものであり、現在世界の天文台で、次世代補償光学系として研究開発が行われている。また、生体イメージングに補償光学系を適用する際の新しい問題として、天文学では観察対象である天体を二次元的に面としてとらえるが、生体イメージングでは観察対象の生体を三次元的に撮影する点が挙げられる。そのため、ガイド光源によって補正すべき領域も、二次元的なエリアではなく、三次元的なボリュームとなる。補償光学がどのようにボリュームに作用するかはほとんど解析されておらず新しい研究課題である。


我々は、今年の三月に「すばる望遠鏡から顕微鏡へ:高解像・高感度観察を可能にする次世代補償光学系に向けて」と題したシンポジウムを主催し、次世代天文補償光学系とその生体イメージング応用について議論を行った。そして、補償光学を生体イメージングに適用するためには、観察対象(生体)の光学特性を詳細な計測、その屈折率分布を三次元的に推定するトモグラフィー技術、精細な三次元イメージングを行うための新しい補償光学系、以上三点が必要ではないかという結論に達した。我々はこれらを総括して、「三次元補償光学」と命名した。


この三次元補償光学系、およびその生体イメージングへの適用について、情報交換と深い議論を行うため、上記シンポジウムを企画します。次世代天文補償光学に携わる研究者、最先端 の生体イメージングを行う生物学研究者、補償光学を応用できる可能性がある研究領域において第一線で活躍中の研究者を招待し、それぞれ最新の研究トピック スを紹介していただきます。また、シンポジウムの最後に、三次元補償光学や、顕微鏡を含む幅広い光機器への応用の可能性について、参加者全員で討論・議論 します。本シンポジウムをきっかけにして、多様な研究領域の研究者が三次元補償光学の原理とそれに必須な先端技術、そこから飛躍するサイエンスについて、活発に議論し、これまで不可能であった科学的命題への挑戦に先鞭をつけることを目指しています。



【プログラム】

2014820日(水)

9:00 ~ 9:20            受付

9:20 ~ 9:50          
開会の挨拶 および 趣旨説明

                               高見 英樹 (国立天文台)

セッション1  座長: 山本 裕紹 (宇都宮大学)
9:50 ~ 10:20
        早野 裕 (国立天文台)
          ULTIMATE-SUBARU:すばる次世代補償光学系
10:20 ~ 10:50
      三浦 則明 (北見工業大学)
          太陽観測のための補償光学

10:50 ~ 11:00     
休憩

セッション2  座長: 服部 雅之 (基礎生物学研究所)

11:00 ~ 11:30     
今村 健志 (愛媛大学)
         
補償光学の2光子励起顕微鏡への応用
11:30 ~ 12:00     
金城 政孝 (北海道大学)
          
空間光変調素子を用いた多点蛍光相関分光装置の開発と生細胞観察

12:00 ~ 13:00     
昼食、ポスターの貼り出し

セッション
3  座長: 宇治 彰人 (京都大学)

13:00 ~ 13:30     
秋山 正幸 (東北大学)
          3次元大気測定による可視光補償光学の可能性
13:30 ~ 14:00
      松尾 太郎 (京都大学)
                              入部 正継 (大阪電気通信大学)
         
補償光学のための波面計測と補償

14:00 ~ 14:15     
休憩

Special talk    Chair:  Yosuke Tamada (Natl. Inst. Basic Biol.)

14:15 ~ 15:00     
Audrius Jasaitis  (Imagine Optic)
          Different implementations of adaptive optics
          influorescence and super resolution microscopy


15:00 ~ 15:15      休憩

セッション4 座長: 大屋 真 (国立天文台)
15:15 ~ 15:45     
大音 壮太郎 (京都大学)
         
AO-SLO
を用いた網膜構造の評価
15:45 ~ 16:15
      広瀬 太 (キヤノン株式会社)
          次世代眼科機器 補償光学レーザー走査型検眼鏡AOSLOの紹介
16:15 ~ 16:45      玉田 洋介 (基礎生物学研究所)
          補償光学顕微鏡を用いたライブイメージングの実際と展望

16:45 ~ 17:00     
休憩

17:00 ~ 18:00     
ポスター発表 ショートトーク
18:00 ~ 20:30     
ポスターセッション      および 交流会

2014年821日(木)

9:00 ~ 9:15           受付

セッション
5  座長: 村田 隆 (基礎生物学研究所)
9:15 ~ 9:45          山本 裕紹 (宇都宮大学)
         
空中三次元像形成技術への補償光学導入の可能性
9:45 ~ 10:15        橋本 信幸 (シチズンホールディングス株式会社)
          液晶アクティブ光学素子とその補償光学への応用


10:15 ~ 10:30    休憩

セッション6  座長: 村上 尚史 (北海道大学)
10:30 ~ 11:00      岡田 康志 (理化学研究所)
          回折限界を超えた分解能で細胞の向こう側を見てみたい
          ~超解像補償光学顕微鏡の夢~

11:00 ~ 11:30      亀井 保博 (基礎生物学研究所)
           赤外レーザー照射による生体内局所遺伝子発現法(IR-LEGO)の
          問題点と、照射系補償光学に期待するもの

11:30 ~ 12:00      渡邉 朋信 (理化学研究所)
          生体第二光学窓を用いた深部イメージングの試み


12:00 ~ 13:00      昼食

13:00 ~ 14:00      国立天文台見学 オーガナイザー 高見 英樹 (国立天文台)
          以下の3班に分かれて見学
          1、4D2Uプラネタリウム 最大30名
           2、国立天文台歴史探訪 最大20名
          3、最先端天文技術 最大30名


セッション7 座長: 秋山 正幸 (東北大学)
14:00 ~ 14:30      高山 佳久 (情報通信研究機構)
         
空間光通信への補償光学の適用について
14:30 ~ 15:00      服部 雅之 (基礎生物学研究所)
          波面センサーの高感度化と生物、天文、核融合への新展開


総合討論  座長: 早野 裕 (国立天文台)
15:00 ~ 15:50      総合討論

15:50 ~ 16:10      閉会の挨拶
                               平岡 泰 (大阪大学)