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「地位財」と「非地位財」の話

イギリスのニューカッスル大学の心理学者ダニエルネトル氏は
人の「幸福にかかわる要因」が二つに分類できるといいました。
それを「地位財」「非地位財」とに分類しています。
この「地位財」と「非地位財」について今月のNHKオイコノミアで取り上げましたので書いてみます。

ゲストはセブンイレブンやTポイントロゴのグラフックデザイナーの「佐藤可士和」氏でした。
最初に大竹文雄教授が解かりやすい絵で又吉さんと佐藤氏に質問します。

「A」「B」貴方はどちらの住宅に住んだほうが嬉しいですか。という質問です。


「A」は6000万円です。しかし周囲の家はみな8000万円です。
「B」は4000万円です。しかし周囲の家はみな3000万円です

この質問に正解はありません。
自分の住んでいる家は「A」の方が立派にも関わらず、なぜか気持ち的に辛いものがあります。
なぜか「B」の方が羨ましい環境と思えてしまいます。
6000万の「A」の方が豪華なのに周囲を見ると気が滅入ってしまうのです。
こういう他人との比較により満足を得るものを「地位財」といい。
家というのは一般的に「B」を選ぶことで「地位財」に当たるといいます。

それと他人との比較は関係なく幸せが得られるもの「非地位財」といいます。

「A」自分の休日が月6日で、周りの人の休日は月8日
「B」自分の休日が月4日で、周りの人の休日は月3日

「A」の方がいいですよね。
「休暇」は「家」と違って周りの人との比較に左右されにくいものだからです。

「地位財」=他人との比較により満足を得るもの 人間の本能
(目に見えるもの 幸福は長続きしない)
所得・役職・ブランド・家・車・子供の成績

「非地位財」=他人との比較は関係なく幸せが得られるもの
(目に見えにくいもの 幸福は長続きするもの)
健康・休み・勤務時間の長さ・良い環境・愛情

先ほど書きましたように正解はありません。別の方を選ぶ人もいると思います。
その人は「休暇」の多さから周囲の人を見て「自分ももっと働かなければ」と
他人の眼が気になる人なのです。
その人にとっては「休暇」も地位財の要素が絡んでいるのです。

人間は「地位財」と「非地位財」と両方のバランスを取っていくことが重要になるわけです。

さて会社で「残業時間を少なくしよう」というキャンペーンがある事業所もあるでしょう。
しかし、実際は失敗してしまうのです。勤務時間の長さは「非地位財」の問題だからなのです。
つまり残業を少なくすることの自分のメリットが感じられず、むしろ報酬が少なくなる。
周囲との比較もしません。残業を少なくしたからといって満足感はうまれません。

むしろ残業をすればするほどやったような気になり「満足感」はあがることが解っています。
だから会社が「上限」を決めないと人間は働き過ぎてしまうのです。

ネーチャー誌による人間の考える力について実験結果があります。
①朝に問題を出し休まずに8時間考え、夜に答えを出す。
②夜寝る前に問題を出し、8時間寝てから朝答えを出す。
③夜に問題を出し、徹夜で8時間考えて答えを出す。

結果は(問題の正解率 ①22.7% ②59.1% ③22.7%)でした。

つまり「睡眠」を取った後の方が正解率が高いということで、夜遅く迄の仕事の成果は上がっていません。
実際は生産性は落ちているということです。
(私はこの調査を個人的にはそうも思えないのですが)

じつは残業廃止できた企業例が紹介されました
○会社の中に「帰りにくい」という雰囲気が作らない。(この為には上司は速く帰ることが必要)
○残業代を少なくした分ボーナスで還元した。これを組織単位で行った。

これを実行したら社員達が効率を重視するようになり、
連帯責任の為に、忙しい人の仕事を手伝うようにまでなったといいます。
この為に営業利益が4年前の2倍となる。(支払方法の変更で人件費額は変わっていない)
(但し、これだけが利益2倍の原因というのはどうだろう)

ただし「残業減少」という目には見えにくい「非地位財」を他課との関係で誇れるように
「地位財」にもって行ったことには興味が持たれる。

この出席者三人の中で、何故長時間働き過ぎてはいけないのかという話になった。
長時間労働は生産性は上がっていない。体のコンディションにはいつも考えて
行動することが大事だという中で、又吉さんが体のことは自分で責任もてば
いいことではないのかという。

佐藤可士和氏はそれに対して自分の経験を話した。
ある日、体の調子がイマイチでクライアントとの話合いがあった。
先方から「体のお具合いは大丈夫ですか」と云われた。
その時にクライアントから見れば話し合いに「佐藤は万全な体制じゃない状態できたのか」と云われたように感じたという。
彼は自分がコンデションを整えていないことは相手に失礼だった。と心で反省した。

休日・休息を取るということはコンディションを整えるということ。
鍛え続けて身体をボロボロにして、試合に挑むようなアスリートなどはいない。
人間は動き続けるということは普通に考えると無理なのだ。
社会人であれば約束を守る為にもコンディションを整えていなければ
相手に失礼になるのである。佐藤可士和氏の納得できることばだった。

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