瀬底サンゴ礁セミナーでは、瀬底研究施設に来られる研究者などの方々をお招きし、サンゴ礁に関する様々な話題提供の場を設けております。 *瀬底サンゴ礁セミナーは、第23回で終了となります。 【第23回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2012年3月1日(木)18:00-19:30 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):熊谷直喜(琉球大学熱帯生物圏研究センター)・酒井一彦(琉球大学熱帯生物圏研究センター) タイトル:(熊谷)「藻場・サンゴ礁移行帯の海底景観構造に対する底生魚類の応答様式」 タイトル:(酒井)「瀬底島周辺におけるサンゴ群集とサンゴ幼生定着のダイナミクス」 要旨(熊谷): サンゴ礁の衰退が世界各地で問題となっている。一方、国内の暖温帯では藻場が減少する代わりにサンゴ礁が発達するという変化が起こっている。本研究では、藻場を利用する魚類とサンゴ礁を利用する魚類とを対象に、海底景観構造に対する応答パターンの推定を試みる。 海底方向と前方方向の2機のビデオカメラにより底生生物群集と底生魚類を撮影するkmスケールでの連続的調査を行った。各生物・環境要因による影響が減衰しつつ周囲に波及する効果をconnectivity indexを用い表現した。藻場魚類の個体数は広い範囲の藻場に対しの正の応答、サンゴに対してはごく狭い範囲の負の応答を示した。サンゴ礁魚類の応答パターンはまちまちであり、藻場やサンゴの利用様式に応じた反応を示した。 要旨(酒井): メタ解析によって、造礁サンゴが世界的に減少傾向であることは明らかとなっているが、サンゴが増加しているサンゴ礁があることも事実である。瀬底島周辺でも、サン ゴの被度は1980年代から全体的には減少傾向であり、1998年の高水温によるサンゴの大規模白化現象によって、特に枝状種が激減したが、近年サンゴ群集が回復している 場所があることも事実である。今回のセミナーでは、瀬底島周辺におけるサンゴ群集とサンゴ幼生定着のダイナミクスの長期観察と、2011年から開始した沖縄科学技術大 学院大学との、沖縄本島西岸などでの親サンゴと幼生定着調査の結果から、幼生の親からの分散距離が比較的長いAcropora属サンゴでもあっても、通常は幼生の親か らの分散距離が数10 ㎞のスケールで起こることが示唆されることを紹介する。また、幼生の親からの分散距離が比較的短いことが、メタ個体群の動態や進化にどのような意味を持つかを議論したい。 【第22回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2012年2月16日(木)18:00-19:30 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):山本広美(沖縄美ら海水族館)・磯村尚子(沖縄工業高等専門学校) タイトル(山本):「飼育トゲスギミドリイシの形態変異と繁殖」 タイトル(磯村):「スギノキミドリイシ表面存在するバクテリア叢の変動解析」 要旨(山本): 枝状ミドリイシ類は、サンゴ礁の主要なハビタットを形成し、熱帯・亜熱帯沿岸で重要な漁場となるなど、社会的価値の高い生物群である。しかし、分類的には未整理な部分が多く、骨格形態の多型や著しい種内変異、そして生息環境への可塑性などが分類を困難なものとしている(深見他2010)。 沖縄美ら海水族館で長期飼育しているトゲスギミドリイシAcropora intermedia (Brook, 1891)は、ミドリイシ属の同定の決め手となる放射サンゴ個体の形状に変異がみられ、同属内他種との形態的な区別が困難な群体が出てきた。そこで、本研究では、野外と飼育下でのA. intermedia形態変異および繁殖成功の比較を試みた。 Wallace(1999)などに基づき、飼育群体の中でA. intermediaの形態的特徴が維持されている群体をAタイプ、変化した群体をBタイプとし、沖縄県本部周辺海域に生息する野外群体を採取し野外タイプとした。これら3タイプ間の形態的な違いを定量化するために、骨格の形態的特徴を詳細に観察し、デジタルマイクロスコープでデジタル画像を撮影した。また、野外から採取したA.intermediaと、飼育Aタイプ・Bタイプの交配実験をおこない、2010年では12通りの組み合わせ全てにおいて、2011年には、34通りの組み合わせのうち30組で受精・発生を確認した。よって、飼育A、BタイプはA. intermediaの形態変異である可能性が示唆された。 さらに、群体のさまざまな部位において放射サンゴ個体の計測を行い、部位と形状変異との相関を明らかにし、枝状ミドリイシ類全般の望ましい計測部位を提案する。 要旨(磯村): ○磯村尚子・儀武菜美子(沖縄高専・生物資源)・和田実(長大・水産) 【背景・目的】 沖縄美ら海水族館で飼育のスギノキミドリイシに、Rapid Tissue Necrosis(RTN)が発症している。 RTNとは組織が骨格から剥離するサンゴ特有の病気で、詳細な原因はわかっていないが、 バクテリアからの影響が示唆されている。 しかし、先行研究では定常状態におけるサンゴ上のバクテリア叢が明らかにされていないため、 病気の発症または環境変化におけるバクテリア叢の経時変化を把握することができていない。 本研究では、水族館の飼育条件下でバクテリア叢の定常状態を知るために、 月ごとに①全菌数のカウント、②遺伝的定性解析及び③遺伝的定量解析を行った。 【実験方法】 2010年の1月から12月の各月、美ら海水族館の屋外水槽のスギノキミドリイシと海水を採取し、以下の解析を行った: ①全菌数のカウント;サンゴ付近の海水をDAPI染色後、菌数のカウントを行った(ただし、共同実験者による)。 ②遺伝的定性解析;バクテリアの16SrRNA領域をPCRにより増幅し、Denaturing Gradient Gel Electrophoresis(DGGE)法により 解析を行った。その後、DGGEで得られたバンドを再度PCR増幅し、塩基配列決定後、バクテリアの同定を行った。 ③遺伝的定量解析;バクテリアの16SrRNA領域をPCRにより増幅し、得られた各月のPCR産物を塩基配列決定後、バクテリアの同定を行った。 【結果・考察】 以下に解析結果と考察を示す。 ①全菌数のカウント;1、2月と6、7月でとくに菌数が多く、他の月の倍以上の菌数が確認できた。 RTN発症時期と重なっており、菌数増加とRTN発症には何らかの関連があると考えられた。 ②遺伝的定性解析;決定した塩基配列から、DGGEでバクテリアを検出できることが示された。 また、各月でバンドの分離がみられたことから、複数のバクテリアが各月に生息していることが確認できた。 さらに、各月で異なった分離がみられたことから、月ごとにバクテリア叢が変動することが明らかとなった。 ③遺伝的定量解析;決定した塩基配列から、定常状態では病原性、非病原性、日和見感染性など 様々なバクテリアが混在してバクテリア叢を構成していることが明らかとなった。 以上の結果と併せて、今後は環境要因や実際のRTNの発症データとの相関をみることが必要である。 【第21回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2012年1月27日(金)18:00-19:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):野中正法(沖縄美ら海水族館) タイトル:「日本産サンゴ科Coralliidae サンゴの保全に向けた研究について」 要旨: サンゴ科Coralliidaeに属するサンゴは一般に「宝石サンゴ」と呼ばれ、その堅固な骨軸は紀元前から装飾品等として珍重されてきた。宝石サンゴ漁は、日本では19世紀から始められ (Kosuge 1993)、現在も高知、鹿児島、沖縄で続けられている。水産物として長く利用されているにもかかわらず、その生物学的研究は岸上(1904)以降ほとんどなされていない。沖縄美ら海水族館では、開館の2002年以来沖縄産宝石サンゴ類の飼育・展示を行うと同時に、その保全に向けた研究を継続している。今回はその分類学、琉球列島における漁獲の記録とともに、未だ解明されていない繁殖生態についての研究を紹介する。 日本産サンゴ科サンゴは7種が知られており、そのうち3種が漁獲対象とされている。これらの記載は100年以上前であり、またタイプ標本が指定されていないため分類形質が曖昧であった。日本産6種を記載した岸上により採集された標本が、スミソニアン博物館に収蔵されていることが分かり、これらの標本を取り寄せ、3種のネオタイプ標本指定を行った。また、モモイロサンゴCorallium elatiusとラベルされていた3標本は、ともに別種と分かり、2種については新種記載を行った。 2005-2009年にかけ、琉球列島(薩南諸島-八重山諸島)の水深115-330mにおいて、アカサンゴParacorallium japonicum 94群体、モモイロサンゴ63群体、シロサンゴC. konojoi 34群体を、有人潜水艇及びROVにて採取した。これらの記録を精査すると、3種共に、高緯度から低緯度に行くに従い生息水深が深くなる傾向が見られた。また、アカサンゴは群体幅が平均38cmであったが、モモイロサンゴは平均64cm、幅1mを超す群体も確認された。 これら3種類の標本を用い、枝先の一部を脱灰後、透過観察切片としヘマトキシリンとエオジンにて染色、顕微鏡下で観察、卵と精子嚢の大きさを測定した。その結果、卵と精子を同時に持つ群体は確認できず、雌雄異体と考えられた。性比はシロサンゴにおいては1:1であったが、アカサンゴ、モモイロサンゴは有意にメス群体が多かった。生殖腺は摂食ポリプautozooidではなく管状ポリプsiphonozooid内に存在した。組織内にはプラヌラ幼生は確認できず、放卵放精型spawnerと考えられた。生殖腺を持つ最小群体のサイズは、アカサンゴでは高さ15cm、モモイロサンゴでは22cm、シロサンゴでは8cmであり、これ以上の大きさだと繁殖可能であることが示唆された。卵、精子嚢の直径は5-9月に大きくなる傾向があり、繁殖時期の推定が可能となった。また、アカサンゴ、モモイロサンゴにおいては卵の直径には2つのピークが見られ、2年周期での発達が示唆された。 繁殖生態の一部が解明できたことから、これらのデータを元に漁獲時期・サイズの制限などを提案し、今後の宝石サンゴ資源の保全につなげて行きたいと考えている。 参考文献 Bayer F.M. & Cairns S.D. (2003) A new genus of the scleraxonian family Coralliidae (Octocorallia: Gorgonacea). Proceedings of the Biological Society of Washington 116 (1): 222-228. Nonaka M., Muzik K. & Uchida S. (2006) Culture, Study and Display of Precious Corals. Proceedings of the 10th International Coral Reef Symposium, Japanese Coral Reef Society, Japan: 1821-1831. Nonaka M. & Muzik K. (2009) Recent harvest records of commercially precious corals in the Ryukyu Archipelago. Marine Ecology Progress Series 397: 269-278. Nonaka M. & Muzik K. (2010) Jewels of the deep sea: precious corals. In: Uchida S. (Ed) Into the unknown, researching mysterious deep-sea animals. Proceedings of an International Symposium, 23–24 Feb 2007, Okinawa Churaumi Aquarium, Okinawa: 84-127. 岸上鎌吉. (1904) さんごノ研究. 水産調査報告14 (1): 1-31. 【第20回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2011年9月29日(木)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):中島祐一(東京大学アジア生物資源環境研究センター) タイトル:「熱帯・亜熱帯の黒潮圏沿岸域に生息する海産固着性動植物の集団遺伝学的研究」 要旨:生物相が豊かな沿岸生態系において、急激な気候変動や地域規模の撹乱による海産固着性動植物の減少が懸念されており、保全策の提言が急務となっている。熱帯・亜熱帯の沿岸生態系において代表的な造礁サンゴと海草においては、幼生分散・種子分散が個体群の維持や回復に大きな役割を果たすため、分散の程度を推定することは保全を考える上で欠かせない。講演者はこれまで、撹乱による自然環境の悪化が懸念される黒潮圏沿岸域をモデル地域として造礁サンゴと海草を対象に、遺伝マーカーを用いて集団遺伝学的研究を行ってきた。本講演では、集団遺伝学的アプローチを用いて推定された造礁サンゴと海草における個体群間の加入パターンに関する研究結果を報告し、それぞれの種の個体群維持・回復機構について考察する。加えて、より具体的な保全案を確立するためには今後どのような集団遺伝学的研究が必要であるか、提案する。 参考文献、資料 琉球大学:瀬底研究施設の酒井教授らの研究成果が科学雑誌に公開 【第19回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2011年8月26日(金)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):新里宙也(沖縄科学技術研究基盤整備機構) タイトル:「コユビミドリイシ・ゲノムを用いたサンゴの環境変動応答の理解」 要旨:サンゴがストレスを受けると、サンゴは体内に共生する褐虫藻を失い、白化します。白化現象を遺伝子レベルで明らかにするための基礎情報となる、サンゴの全ゲノム情報の解読に世界で初めて成功しました。解読対象としたサンゴは、沖縄に普通に生息し、1998年の世界的な大規模白化現象により激減したコユビミドリイシAcropora digitifera。コユビミドリイシ1群体の精子からDNAを抽出して、次世代型DNAシーケンサーを用いてゲノムを解読したところ、約4億2千万塩基対のコユビミドリイシの全ゲノム解読に成功し、約23,700個の遺伝子を発見しました。ゲノム情報を解析した結果、①サンゴの起源が化石から予想されたものよりも古いこと、②ミドリイシ属は、非必須アミノ酸であるシステインを合成するのに必要な酵素を持たず、褐虫藻に依存している可能性があること、③紫外線から身を守るためのUV吸収物質を、これまではサンゴに共生している褐虫藻が作っているとされてきたが、サンゴ自身が合成できること、④複雑な自然免疫系の遺伝子を持つこと、⑤サンゴ特有の石灰化候補遺伝子が多数あること、などが明らかになりました。これまで、サンゴは骨格を持つことなどから、遺伝子の研究を行うことが困難でした。本研究でサンゴの全ゲノムが解読されたことにより、サンゴと褐虫藻の共生メカニズムの解明や、今後起こりえる環境変動にサンゴと褐虫藻の共生体がどのように応答するのかなど、詳細なメカニズムが明らかになることが期待されます。 参考文献 Shinzato C, Shoguchi E, Kawashima T, Hamada M, Hisata K, Tanaka M, Fujie M, Fujiwara M, Koyanagi R, Ikuta T, Fujiyama A, Miller DJ, Satoh N (2011) Using the Acropora digitifera genome to understand coral responses to environmental change. Nature doi:10.1038/nature10249 【第18回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2011年7月29日(金)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略): 熊谷直喜(琉球大学熱帯生物圏研究センター) タイトル:「変わりダネの進化と維持伝播を考える:イソバナに住むヨコエビの宿主特異性機構」 要旨:大多数の種が持ち得ない特異な性質を備えた個体群・種はどうやって生じるのだろう?特異な性質が獲得された後、個体群・種レベルへと拡がるメカニズムはどのようなものなのか?本発表では、大多数のジェネラリストと異なるような行動パターン、餌の好み、生息場所の選択性を獲得・維持する機構に迫りたい。本研究では、ソフトコーラルの一種イソバナに専住するヨコエビに着目し、海洋環境の特徴と関連させて宿主特異性の成立プロセスを検証する。まず宿主選択性の獲得に関わる要因を室内・野外の実験により明らかにする。次に、いかにして特異性が長期にわたり維持されうるかを野外実験と数理シミュレーションによってメタ個体群生態学の観点から解析する。 参考文献 Kumagai, N. H. (2008) Role of food source and predator avoidance in habitat specialization by an octocoral-associated amphipod. Oecologia 155: 739-749 Kumagai, N. H. (2006). Distance effects on patterns and processes of dispersal in an octocoral-associated amphipod. Marine Ecology Progress Series 321: 203-214. 【第17回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2011年7月20日(水)16:00-17:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):Johann Hohenegger (University of Vienna, Department of Paleontology,Althanstrasse 14, A-1090 Wien, Austria) タイトル:FUNCTION OF SIZE AND SHAPE IN LARGER BENTHIC FORAMINIFERA 要旨:An important function of symbiont-bearing benthic foraminifera living in shallow tropical and warm temperate sea is to provide their endosymbiotic microalgae with light. At the same time, these foraminifera have to resist hydrodynamic forces. Foraminifera match these demands by constructing shells (tests) functioning as glasshouses. In shallowest regions of oligotrophic tropical seas, at the one end of the scale, foraminifera with spherical and thick lenticular tests develop special fixing mechanisms to resist extreme water motion. To provide the central test parts with light, they develop transparent structures called piles or plugs. In the deepest euphotic zone, at the other end of the scale with extremely weak light and quiet water, foraminifera with flat discoid and blade-shaped tests possessing a high surface/volume-ratio position their symbionts just beneath the transparent test walls, intensifying the weak light through elevated test surface structures. Between these two extremes, foraminifera react to decreasing light intensity and water motion by the transition in shell form from spherical to extremely flat tests. A second way in test form from high energetic shallow water to less, but still energetic water is the transition from spherical to spindle shaped (fusiform) tests, again raising the surface/volume-ratio but not to the same degree as performed by test flattening. 【第16回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2011年7月14日(木)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略): 服田昌之(お茶の水女子大学) タイトル:「ミドリイシの初期発生から骨格形成までを観る」 要旨:ミドリイシサンゴは、卵割からプラヌラへの初期発生、プラヌラからポリプへの変態、石灰化、群体形成、いずれも独特な形態形成過程を見せてくれる。今回のセミナーでは、これらの形態形成過程を初めて捉えた動画を基盤として紹介しつつ、ポリプの基本構造や、初期ポリプにおける石灰化の過程など、あいまいなままにされてきた理解を考え直したい。生き物は3次元の空間構造をもって時間とともに変化する存在である。例えば石灰化でも、化学反応だけを考えていては、現実の生き物の中で本当に起こっている事象を捉えられない。生物学の原点に立ち戻り実直に観ることが大切であることを、実例をもって示したい。 【第15回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2011年5月27日(金)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略): 田中泰章(琉球大学) タイトル:「造礁サンゴの物質循環機能と富栄養化の影響」 要旨:サンゴと褐虫藻が共生する造礁サンゴの群体は、サンゴ礁生態系の物質循環に大きな役割を果たしている。例えば、サンゴによる石灰化は炭酸カルシウムを沈着させ、褐虫藻の光合成は二酸化炭素と栄養塩を吸収することで有機物を合成する。作られた有機物はサンゴの成長に使われるだけでなく、周囲の海水中に溶存態・懸濁態有機物として放出され、細菌などの微生物群集に利用されながら、その代謝過程を通じて徐々に二酸化炭素や栄養塩に無機化されていく。造礁サンゴが関連するこのような物質の流れは、生物間を巡る重要な循環システムであるが、近年の環境変化によってその構造が大きく変わろうとしている。今回のセミナーでは、これらの基本プロセス及び海水の富栄養化が与える影響を実験的に定量化した自身の研究を紹介し、造礁サンゴを中心とした一連の物質循環をまとめる。 【第14回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年12月8日(水)16:00-17:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):Yimang Golbuu(Palau International Coral Reef Center) "General Introduction of the PICRC (Palau International Coral Reef Center)" In this seminar, I will talk an overview of the research program at PICRC and presents some of the current results of our research on Watersheds and Marine Protected Areas. 【第13回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年10月7日(木)15:00-17:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):Robert van Woesik(Department of Biological Sciences, Florida Institute of Technology) "Planulae, polyps, and coral populations in a rapidly changing environment" 要旨:Contemporary coral reefs survive through, and recover from, disturbances at a variety of spatial and temporal scales. Understanding disturbances in the context of ecological processes may lead to accurate predictive models of population trajectories. Most coral-reef studies and monitoring programs examine state variables, which include the percentage coverage of major benthic organisms, but few studies examine the key ecological processes that drive the state variables. Processes of major interest include reproduction, recruitment, post-settlement mortality, coral growth, rates of partial colony mortality, fission, and mortality. These population processes are in turn dependent on macro-processes, such as predation and herbivory. The processes vary, however, in accordance with regional oceanography. Historically, some coral-reef regions experienced high-frequency temperature anomalies, while other regions experienced low-frequency anomalies. Recently, we noted that the localities that experienced greater thermal anomalies in the past also experienced greatest thermal stress in the last 15 years. Yet, it may turn out that corals at the high frequency localities are also more likely to undergo rapid directional selection compared with coral populations at low-frequency localities. Therefore, when comparing coral-population trajectories across regions and oceans, it is critical to understand the key processes within both regional and historical contexts. 【第12回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年8月3日(火)18:00-20:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):岡地賢((有)コーラルクエスト) 「オニヒトデ大発生の要因と仮説」 要旨:小卵多産型の棘皮動物には、大きな個体数変動を示すものが二十数種類知られています。オニヒトデもそのひとつで、1960年代から1970年代にかけてインド・太平洋の各地で起きた大発生は、自然な変動の範疇に含まれると考えられたことがありました。しかし、1980年代以降、人口が集中する地域の沿岸でオニヒトデの大発生が繰り返し起きるようになったことから、その原因が人間活動にあるのではないかと疑われています。今回のセミナーでは、オニヒトデ大発生のひきがねとなるいくつかの要因と、それらに基づいて組み立てられた大発生の仮説を紹介します。 参考文献 Fabricius KE, Okaji K, De’ath G (2010) Three lines of evidence to link outbreaks of the crown-of-thorns seastar Acanthaster planci to the release of larval food limitation. Coral Reefs 29:593-605 【第11回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年7月28日(水)18:00-19:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):Itzik Hosgin (Tel Aviv University) "Life history of fungiid corals" 【第10回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年7月14日(水)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):野澤洋耕(台湾中央研究院) "Reproduction of the genus Acropora/ Effects of refuge structure on reef coral recruits" 要旨:私が行ってきた造礁サンゴの生殖・加入過程についての研究のなかで、最近面白いと思っている2つのトピックについて紹介したいと思います。ミドリイシ属は地球温暖化の影響を受け、サンゴ礁域から急速に姿を消しつつある造礁サンゴの1グループであり、保全の観点からその生殖・加入過程についての理解を早急に進めるべきグループであると考えています。セミナーの前半ではこれまでの研究より示された、ミドリイシ属の生殖・加入過程におけるユニークな点についてお話したいと思います。セミナーの後半では、定着基盤表面の形がサンゴ幼生の生存にどのような影響を与えているのかについてお話したいと思います。 【第9回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年7月9日(金)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):Lim Phaik Eem(University of Malaya, Malaysia) 「紅藻オゴノリ属の一種Gracilaria changiiのマレー半島における遺伝的多様性について」 概要:紅藻オゴノリ属の海藻は,一般に寒天の原藻として知られ,おもに熱帯から温帯にかけて分布している。講演者の研究室では,この種を潜在的な有用種として,遺伝子組換え,組織培養,プロテオミクス,プロトプラスト生成,機能遺伝子等,様々な面から研究を進める一方,この種の遺伝的多様性についての基礎的な研究も行っている。本セミナーでは,おもに,この種のミトコンドリア遺伝子のcox1に基づく,遺伝的多様性ならびに生物地理学的な知見について紹介していただく。 Title: Genetic Diversity of Gracilaria changii from Peninsular of Malaysia based on coxI Yoon-Yen Yow, *Phaik-Eem Lim & Siew-Moi Phang (*Presenting author) Institute of Ocean and Earth Sciences & Institute of Biological Sciences, University of Malaya, 50603 Kuala Lumpur, MALAYSIA Abstract: Gracilaria changii is a potential species for commercialization in Malaysia as it has high yields of good quality agar with high gel strength for production of food grade agar and agarose. The Algae Research Laboratory of the University of Malaya has carried out the research on various aspects of G. changii including genetic transformation, tissue culture, proteomics, protoplast generation and functional genomes but there is no study on the genetic study of G. changii in Malaysia. The understanding of genetic diversity will provide valuable information for conservation, management and selection for cultivation. In this study, cytochrome c oxidase subunit I (cox1) was used for the genetic diversity study on Gracilaria changii collected from Morib, Selangor; Middle Banks, Pulau Pinang; Gua Tanah, Melaka; Batu Besar, Melaka; Batu Tengah, Melaka and Sungai Pulai, Johor along the west Coast of Peninsular Malaysia and Kampung Gong Batu, Terrengganu from the East Coast of Peninsular Malaysia. A total of seven haplotypes were identified among the examined specimens. 【第8回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年7月5日(月)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):北村誠(慶応義塾大学) 「サンゴ幼生の変態誘因物質」 要旨:多くの海洋付着生物は,その生活環において浮遊幼生期があり,生息地の拡大をはかる.その後,適当な基盤を選んで着底・変態することが知られている. サンゴ幼生の場合,無節サンゴモや海洋バクテリアなどによって着底・変態が誘起される.生息地の決定という重要な着底・変態という生物現象を,他の生物に依存する仕組みは非常に興味深い.我々は,この生物現象を司るケミカルシグナルの解明を目的に研究を行なっている.現在までに得られた知見を本セミナーで紹介する. 【第7回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年6月16日(水)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略): 茅根創(東京大学理学系研究科) 「サンゴ礁学:4つのギャップとフェイズシフトモデル」 要旨:新学術領域「サンゴ礁学」は,ローカル・グローバルなストレスによって危機にあるサンゴ礁と人との新たな共生・共存関係を提案することを目的として,平成20年度にスタートした,生物学,地球科学,化学,工学から人文科学までを含む学際的な研究領域である.サンゴ礁学の目標は,サンゴ礁の複合ストレス応答モデルを,ストレスをもたらす社会経済システムの解析も含めて構築することである.目標達成に向けていくつかの乗り越えるべき4つの課題が浮かびあがってきた.1)時間(空間)スケールの異なるストレスと,その複合的な効果をどのように評価するか,2)生物・遺伝子レベルのストレス応答を,どのように群集・生態系レベルのストレス応答にスケールアップするか,3)サンゴ礁生態系を構成するコンパートメントをどのように設定するか,4)社会システムにとって,サンゴ礁に与えるストレスと,それによって劣化する生態系サービスをどのように見積もるべきか.これらの課題の多くは,サンゴ礁と人との関係の再構築という目標のもとに学際分野をつなぐ際に現れた問題である.サンゴ礁生態系の複合ストレス応答については,サンゴ群集から藻場へのフェイズシフトを解明するモデルの構築が必要である.現在,藻食魚類と藻,サンゴの生態系モデルからフェイズシフトを説明する仮説が流行しているが,日本や東南アジアなどのサンゴ礁は,ストレスに対するサンゴや藻類の応答という素過程ベースのモデルの構築が必要であると考えている. Title: Coral Reef Science: four gaps and a model for phase shift Abstract: Coral Reef Science, a project funded by MEXT by Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas started in 2008 proposes a strategy for ecosystem symbiosis and coexistence with human beings under multiple stresses. It is an interdisciplinary project covering biology, ecology, earth science, chemistry, engineering and human science. The aim of this project is to construct a response of coral reefs to multiple stresses including analysis of socio-economic system that put stresses to coral reefs. Four gaps have been emerged to overcome for the final achievement in the course of interdisciplinary approach. 1) How to evaluate multiple stresses with large variation in time and space; 2) How to scale up stress response from biological and generic scale to community and ecosystem scale; 3) How to set compartments constituting coral reef ecosystem; and 4) How to estimate stresses and ecosystem services from socio-economic point of view. A stress response model should comprehensively explain the phase shift from coral to algal community. At present, community approach with herbivore fish and algal hypothesis has successfully explained shift, but I think we need a stress-response process based approach in Japan and SE Asia. 【第6回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年6月11日(金)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略): 服田昌之(お茶の水女子大学湾岸生物教育研究センター) 「ミドリイシ幼生の着生変態機構とその周辺」 要旨:ミドリイシの幼生は基盤上の微小環境に反応して着生変態することが知 られています。着生変態を支配する環境シグナルとしての基盤上の多様なバク テリアと、体内応答シグナルとしての神経ペプチドホルモンとその下流の未知 シグナル分子のカスケードについて、最新の知見を紹介しつつ議論したいと思 います。その応用面や進化生態についても触れたいと思います。 【第5回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年6月3日(木)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略): Dr. Sylvain Agostini (Shizuoka University) “Polyp gastric cavity: Characteristics and importance for the coral symbiotic complex” 要旨: Polyp gastric cavity, place of digestion of the matter ingested by the coral, has not yet been extensively studied, especially processes occurring inside. Using an original method of sampling we could find high bacteria abundances and high vitamin B12 concentrations. Therefore we made the hypothesis that coral forms a semi-closed system and that symbiotic bacteria in the coelenteron produce the vitamin B12 required by zooxanthellae and the host. Furthermore it was possible to show the translocation of the vitamin produced by bacteria to the zooxanthellae using cobalt-57 as tracer. Characteristics of the internal environment: the gastric cavity of polyps of Galaxea fascicularis, are presented including: bacteria community, dissolved oxygen, alkalinity and pH. Variation of the physico-chemical parameters studied inside the cavity show distinct behavior than in surrounding water. Further investigation, using similar methodology such as coelenteric fluid sampling, micro sensor, radio tracer is required but the results obtained show the importance of studying the internal coral and the processes occurring inside, especially for the prevision of the impacts caused by surrounding water chemistry change: acidification, nutrient enrichment, etc. 【第4回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年5月17日(月)15:00-15:30 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略): 中林和重(明治大学農学部)「二酸化炭素濃度減少に寄与する弱点滅光照射によるサンゴの育成技術」 【第3回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年4月22日(木)17:00-18:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):樋口富彦(琉球大学理学部)「造礁サンゴにおける活性酸素研究」 要旨:活性酸素とは、酸素が化学的に活性になったもので、非常に不安定で強い酸化力を持つ。活性酸素は生命活動に不可欠である一方、過剰な活性酸素は生物にとってストレスとなり、褐虫藻の生成する活性酸素がサンゴの白化現象を引き起こす要因となっているとも言われている。今回のセミナーでは、造礁サンゴにおける活性酸素に関する研究の概要について、これまでの結果を交えながら紹介する。 【第2回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了しました 日時:2010年3月8日(月)、18:30-19:30 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者(敬称略):入江貴博(琉球大学熱帯生物圏研究センター)「温度の時間的・空間的変動と海水の酸性化に対する海洋生物の生活史適応:野外調査・飼育実験・最適性モデルの解析を用いた統合的アプローチ」 要旨:海洋酸性化は海洋生態系と全地球炭素循環に対する散在的な最大懸念事項のひとつである。石灰化を行う生物の中でも、円石藻類は深海への炭素輸出フラックスという点で重要な役割を担っているため、研究者の注目を集めてきた。現在、実証研究者は海水の酸性化に対する表現型の可塑的応答を評価することに労力を注いでおり、進化的な応答への考慮はそのアプローチから欠如している。従って本研究では円石藻類の生活史が示す進化的応答を評価するために、最適性モデルを構築・解析した。広く信じられている予測とは対照的に、このモデルは酸性化に起因するより高いコスト(高い石灰化コスト・外骨格溶解の加速・死亡率の上昇)の下では、自然選択がより石灰化率の高い外骨格を作るような生活史を好むことを予測した。その結果として、1回のブルーム中に結晶化される炭酸カルシウムの総量(∝深海へ輸出される炭素量)も増大する。これらの知見は、海洋酸性化が進行するにつれて、より高い炭素固定能力を伴って海洋生物の石灰化率が上昇する可能性を示唆する。従って本研究では、海洋酸性化の問題に現在従事している科学者は生物の進化動態を考慮すべきであることを強調したい。 後半は、第57回日本生態学会大会での企画集会「生活史がもたらす適応進化」での講演内容を紹介する。特に決定成長の分類群を対象とする研究者の間では、低い温度環境で育った外温動物が長い成長期間を経て、より大きな体サイズで成熟するという反応規範の適応的意義が古くから議論の対象となってきた。この温度反応規範は「温度-サイズ則」(temperature-size rule)と呼ばれ、分類群の壁を越えて広く観察されている。この経験則が自然選択によって変更されざる拘束(constraint)の産物であるという可能性は、主に昆虫を対象とした実証研究によって繰り返し否定されてきた。その一方で、この普遍的な反応規範を進化的に支える適応的意義を説明する数多くの(相互に背反しない)仮説が提唱され、百家争鳴の様相を呈している。本講演ではまず、これまでに提唱された代表的な仮説とその検証事例を紹介する。温度-サイズ則に関する実証研究はこれまで主に昆虫を材料として進められてきたという経緯がある。従って後半では、昆虫以外の分類群に対する研究の一例として、潮間帯に棲む決定成長の腹足類(有殻の軟体動物)を対象とした私自身の研究成果を紹介する。貝殻の材料であるCaCO3は温度が低くなるほど結晶化に要するコストが増大するため、石灰化を行う外温動物は温度-サイズ則に従わない可能性が指摘されている。それに関わらず、対象とした種(ハナビラダカラ Monetaria annulus)は温度-サイズ則に従うことが飼育実験によって明らかにされた。この事実を前提として、陸上生物とはまったく異なる生態学的背景を有する海洋ベントスが温度-サイズ則に従うことの適応的意義を突き止めることを目的とした現在進行中のアプローチについて述べる。 【第1回瀬底サンゴ礁セミナー】*終了いたしました。 日時:2010年2月22日(月)、18:30-20:00 場所:琉球大学瀬底研究施設講義室 講演者1(敬称略):石原光則(国立環境研究所)「webカメラを用いた沿岸域モニタリング」 要旨:近年、サンゴを含む沿岸域の環境破壊や劣化が問題となっており、これらの変化のモニタリングが重要な課題となっている。本研究では、これらの新たなモニタリング手法として、webカメラを用いた沿岸域のモニタリング手法の検討を行っている。今回のセミナーでは、検討中のモニタリング手法の概要について説明するとともに、昨年瀬底実験所で行った予備的な観測結果について紹介する。 講演者2(敬称略):浪崎直子(国立環境研究所)「サンゴ礁研究のアウトリーチ活動」 要旨:昨年の行政刷新会議による事業仕分け以降、科学研究費のあり方が注目され、研究の社会的意義を発信するアウトリーチ活動の重要性はますます高まっている。サンゴ礁の研究分野では、保全・再生面で社会との結びつきが強く、行政や民間企業、NGOなど、社会と連携した取り組みが行われている。本セミナーでは、研究者と多様な主体が連携した事業の一つである「日本全国みんなでつくるサンゴマップ」を紹介し、サンゴ礁研究のアウトリーチ活動の可能性について議論したい。 |