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《アルトー劇場 DANCE症候群 — すべてのアートは症状である》

《アルトー劇場 DANCE症候群 — すべてのアートは症状である》
ーアントナン・アルトーが提示する3原則をラカンの精神分析によって解釈するー
及川廣信


 Ⅰ
去勢されたファルスと、埋められない穴 の状態 ← 《 男性  アンドロギネス 女性 》
  
[象徴ファルス]は、意味作用で「実在」をさがし求め、
補填されない裂け口は、「無」の装いで症候を飾る。
化粧/分節化/症状の露見


 Ⅱ
悦楽は、壁と背の接触点にある ← 《 エクスパンシィフ エキリーブル アトラクティフ 》

進むものは退くことの中にある
その中心地点に立っての症候群
四足/壁/無限遠点


 Ⅲ
痕跡が消え失せ、「虚なる場所」 へ光りが投射する ← 《 実 ヌートル(中立)   虚 》

失われた領域をみせる「痕跡」としての症状
実と虚の溶け合いがあって、幻身は立ち上がる
鏡像/光り/もの




アントナン・アルトーの提出する3原則

 アルトーの晩年に書かれた『俳優を狂気にする』に次のような文があります。


「  演劇は
         状態 
           場所
             点であり
       そこでは人間の解剖学を捉え、またそれによって生を回復させ、かつ、統治するのだ。 」



 フランス哲学は著作家アルトー、バタイユ、ブランショなどのエクリチュールの解釈から問題提起してきた。また、ラカンもその精神分析の方法をバタイユの「内的体験」の思考のもとにつくりだした、と思われる。
 アントナン・アルトー(1896〜1948)は、ニーチェ以来の天才と目されていた。が、その言説が難解なため狂人の語として触れることを避けられてきた。同じようにジャック・ラカン(1901〜1981)もまた、その論説の難解さにおいて噂されている。哲学者ドゥルーズはラカン派のガタリといっしょにアルトーの「器官なき身体」という語を「制度が変革出来る国家」に置換し、あわせてフロイトのエディプス論に対立した論説のドゥルーズ=ガタリ『アンチ・オイディプス』という書物を出版し、物議をかもした。

 今回はアルトーの著書『演劇とその分身』の中に次の「創造の秘法」の原則を提示する。そしてアルトーが身体論として重要視した「呼吸」「脊柱」「気の流れ」の3つの軸から解釈し、身体問題の新たな方法を見いだしたい。


《 3原則 》 
               アンドロジーヌ(両性具有者)   男性       女性
               エキリーブル(平衡)       拡張       凝縮
               ヌートル(中性)          実        虚



「問題提起」のための 上記の原則に対する及川の解釈

 これは呼吸による「降神術」を演枝術に利用するため、ユダヤの秘教「カバラ」の3原則を彼なりの解釈をもって取り出してきたものだと思う。なぜカバラかというと、彼は呼吸の哲理をカバラに負うているからです。

 第一に、この原理は両極性から成っている。その両極の中間に<中庸><中観><ゼロ地点>があり、その中間をこのばあい前に出して「事の起こり」を特出したのでしょう。「創造の秘法」においては<アンドロジーヌ>から始めるわけです。
 第二に、この原理構造は静的(スタティック)でなく動的(ディナミック)であるということです。ということは、科学的な観察でなく、形成発展的に、またはプロセス段階として事象をみていることになる。
 第三に、この原則が3という数を基準につくられている。「カバラ」ではピタゴラス派と同じように、3は聖なる数で正三角形は「聖なる三角形」なのです。ですから、これは「絶対なる原理」だということでしょう。

 以上の全体的な規範のもとに、3つの各要素原理について以下、簡単に解釈してみます。 

(1)
アンドロジーヌ(両性具有者)を 男性、女性の両極に分離させたものは誰か? われわれの行為と運命を導く「なにものか」と自分との境界線上の奥深い空洞。男女の分離によって、この空洞化に対する性差が生まれた。だが、それでも女性(陰)と男性(陽)は男女別にかかわらず、われわれの体内に対立・拮抗しながら、共存している。 

(2)
呼吸の呼気と吸気、筋肉の緊張と弛緩、これらをもとにして生物は行動し進化してきた。人間の生物機能の中にすでに消去され、痕跡として潜伏する動物機能が再び浮上する退化のバランス感覚。拡張(進化)と凝縮(退行)の、前進と反省の、細胞、組織、フォルム形式へ向かう力の《横軸のエネルギー》。

(3)
実在をプラスとし、それを無、または否定したものをマイナスとする、その中間の実在(実)でも非在(虚)でもないものを「中性」とする。それは「零度」の状態である。このプラス(陽)とマイナス(陰)の配置と流れを逆転させことが生命の活性化を呼び、からだの中心にエネルギーが集中し、精神が上昇する《縦軸のエネルギー》。

(初出:「アートは症状である ダンスの場合」パンフレット向け原稿/2004)