大丈夫か横浜都計審  (伊達美徳)

 横浜市都市計画審議会の傍聴に行った(2011年8月31日)。
 今回の議事には市街地再開発事業の都市計画という、じつに高度にして複雑な案件があったので、委員がどうこれに対応するか興味があったのだ。
 もう少し意地悪に言えば、はたして実質的な審議ができる能力が、今の委員にあるのだろうか、議案の内容よりも委員の議事への態度を傍聴に行ったのであった。
 結論から言えば、再開発事業の都市計画に関しては、どなたも何にもご存じないらしかった。素人談義でさえもなかった、といってよいだろう。

●再開発事業の都市計画の特殊性
 再開発事業の都市計画に関する議案を審議するには、都市計画審議会は次のような視点を持たねかればならない。
 まず、事業権利者や事業地区周辺住民等への対応で計画策定過程で適正な手続きをしてきているか、都市環境を大きく改変するこの再開発事業が都市計画として適正であるか、そして事業の早期実現性から見てこの都市計画は適正であるかの、3点である。
 市街地再開発事業の都市計画は、その計画時点とそれを事業として生かす時点との間に、大きな時間的な差があってもかまわない計画ではない。
 都市計画決定に引き続いて早期に事業に入らなければな
らない性格を持っている。 ぐずぐずしていると経済情勢が変って事業ができなくなる可能性もあるから、一気呵成に事業化するのである。
 その点で、用途地域や地区計画のような都市計画とは大きく異なる。
 だから都市計画審議会にかかったときには、権利変換計画も建築や道路等の設計などの事業内容が、実態的にはほとんど決まっている。
 都市計画決定に引き続いて事業認可から着工へとすぐに進む段取りを整えてから、審議会へ上程するのが当たり前となっている。

 なお、都市再開発法の初期の頃は、再開発事業の都市計画決定を急いでやる傾向にあったために、その後に権利変換等にもたついているうちに、経済的変化や地域の事情で事業が立ち往生して、都市計画も塩漬けのままとなったものも多くあった。典型的な例が横浜駅西口地区(高島屋の南側)である。
 実際に何年も何十年もたってようやく事業化するときには、初めに決めた都市計画を大変更することになる。あの都市計画決定はいったいなんだったのかという、無為な審議となった例が多い。
その反省の上に立っている。

 そこのあたりが分っていて審議するのと、何も分かっていなくて審議するのでは、大きな差がある。どうやら横浜都計審委員は、何も分かっていない類らしい。
 この案件での発言は、21人中4人が7件、しかし実質的な内容にかかわる発言は、たったの一件であった。肝心の事業の実現性にかかる発言はまったくなし。
 計画内容に特に大きな問題があるとは思えないが、内容が7つもの議決を要する複雑で多岐にわたっているし、反対の意見書提出や公述が多くあったのに、審議会がこの程度の審議でよいのだろうか、と、つくづく思った。

●都市計画と計画内容の詳細
 委員のなかで唯一の的確な指摘をしたのが黒田氏(公募市民委員)であった。
 黒田氏は、地区計画の地区施設の歩行者用通路の位置や幅員について疑問を呈したが(わたしも聞いていて変だと思った)、市当局はこれから詳しい設計にかかるので、実質的にはこれよりもよい計画のさせるという答えであった。
 なんだよ、それでは都市計画ではないことになるじゃん。
 そんなはずはない。もしそんなあやふやな状況なら、都市計画決定をするべきではない。

 実際に、地区計画の地区施設の位置や幅員を決めるときは、
詳細な図面に基づいて決めるのが当り前であるし、上に述べたように再開発事業の場合はこの段階でかなり詳しく図面が書かれていなければならないのだ。
 この辺に適当に点線を引いておけってな具合で決めるのではないんですよ。都市計画の図面にはそうなっていても、実際はそうじゃないんだよなあ。
 これから詳しい設計をするなんて、そんな逃げ口上をさせたままで、引っ込んでしまった黒田氏のお優しいことよ。
 実質的な意見はこれのみであった。

●都市計画の事業的確実性に言及しないのはなぜか
 この事業がこの都市計画で確実に進む保障があるのか、そのあたりを確かめる人が誰もいなかったのが不思議であった。

 組合の組織、権利者の状況、権利変換の状況、これだけの大事業の採算など、どこまできちんとしているのか、都市計画は本当に決めてよいのか、委員のだれも聞きたくないのか。
 たぶん事業者は自信を持ってこの都市計画案を出しているのだろうから、これまで30年もの苦労もあるだろうし、聞いてほしいと思っているに違いない。
 市側もよく知らない、委員はもっと知らない、知らない同士で案を出して審議して可決しましたって、それでよいのか。
 委員の中の誰か、事前に市当局や組合に行って、内容を聞いてきた人がいるのだろうか。聞いてもう分かっているから、なにも実質審議しなかったのだと、思いたいものだ。
 そういえば、日の出町駅前再開発は、
もう
4年も前だったか都市計画決定したのに、いまだに着工していないの
はどういうわけか。
 そのときの都計審も傍聴したが、事業の信頼性については何も審議しなかったよなあ。 

●複雑な立地条件での計画内容が理解できたのか
  それにしても、この高低差があって鉄道と都市計
画道路に挟まれる複雑な制約のある条件の土地で大規模事業は
、図面を見ただけでは非常に分かりにくい。
 委員たちは分かったのだろうか。
 駅とのつながりがどうもおかしいとわたしは思う。駅構内通路が駅前広場に素直に出ない構造なのはどういうわけだろうか。
 2階建てになるような都市計画道路と再開発ビルとのつながりも、どうなって
いるのか図面では読めない。  

 駅前広場がどうして民有地と公有地が立体化する形態(区分地上権設定か)にしなければならないのか。道路特別会計の用地費投入を少なくしようとしたのか、民有地権利者(鉄道事業者か)との妥協の産物か。重層する民間施設と公共施設の構造物の区分と管理はどうするのだろうか。
 周辺の道路や駅施設あるいは隣接街区との取り合いや、周辺地区からの景観などの、周辺地区との関係もよく分からない。
 委員の誰もがこれらについて質疑もしないのは、よく分かっているからだと思いたいが、本当のところはどうなんだろう。

●反対意見の処理についてなぜ問題提起しないか
  この再開発事業の都市計画案に関しては、縦覧においても公聴会でもいくつかの反対意見があった。
 反対意見に対しての、市側からの答え(見解)の書き方が、わたしはどうも気に入らないのである。木で鼻をくくるとはこうであろう。
 わたしが都計審委員であったときにも、そんな見解書を出した案件があって、そりゃあまりに不親切でしょ、もっと真正面から答えなさいよと、審議会で言ったことがある。

  反対意見も実はえてして、ピントはずれだったり、あまりに大局的であったり、逆にあまりに局地的であったりするので、対応する市側も大変ではあることは分かるが、もうちょっと親切でもよかろうと思う。
 たとえば再開発事業の補助金が緊迫財政下で高額すぎる、その金を震災復興の回せ、という反対意見がある。
 市の答えは、前半については再開発事業の補助要領にしたがって適正な支出であるといい、後半には答えようがなかったのか無視している。なんにしても答えになっていない。

  また、こんな大規模開発は震災に不安だからいらないし、駅前に大規模商業施設を作ると近隣商店街が衰退するから反対、という意見。
 答えは、前半には都市計画マスタープランに沿っているからこれでよいのだ、後半については地域まちづくりを推進してまいります、との答え。
 なんともはや、お答えになっていない。なぜ真正面から、説得する勢いで答えないのか?

 ●委員の偏りは是正しないのか
 今回の出席委員は21名、欠席4名(内大学教授3名)であり、全議事での発言者は司会の会長のほかは6名のみ、だが都市計画決定する内容に関しての実質的な発言した人は3名のみであった。
 もっとも重要な案件であった二俣川再開発事業に関しては、上に述べたように実質内容のある発言は1件のみであった。
 出席委員21人中10人全員出席の市会議員の委員からの発言は2名のみ、いつもながら内容のある発言はないのであった。
 市議委員はいつもほとんど全員出席、学者委員はいつも数名欠席であるのは、審議会日程調整を市議委員とだけやっているからだ。
 こんなアンバランスな委員構成がおかしいと、だれも思わないのだろうか。

 メインの再開発案件では、公募市民委員が唯一の専門家らしい発言(都市計画家ではなくて建築家のようだ)だったが、市民から公募する委員というのは、専門家を公募するって趣旨なのかしら。
 わたしが委員だったときも、やっぱりわたしともう1人の公募委員が最も専門的な知識があったなあ、でも、市民公募委員ってそういうのもんかなあ、。

 わたしはもう審議会委員じゃないから、ここで遠吠えするしかない。なんか、大丈夫か横浜都計審委員なんて、言いたくなった。

  ところで、6月30日に開催された前回の都計審の議事録がまだ公開されていない。わたしがあれだけ言ったのに、もう、まったくもっていい加減なモンである。(2011年8月31日、110902一部加筆) 

 

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