SCEBPは,構造構成主義を応用することによって,エビデンスに基づいた医療(evidence-based medicine,以下EBM)を理論的,方法論的に拡張させたものです(図).それにより,SCEBPは,様々な実践領域の特徴に応じて,エビデンスを 柔軟に活用できる可能性を提供しています.
具体的な実践手続きは,1.疑問の明確化,2.情報収集,3.批判的吟味.4.適 用,5.自己評価というものであり,これはEBMと共通しています.つまり,SCEBPは,すでに多くの方が慣れ親しんだやり方を基礎にすることにより, 新しい方法を取り入れたときに生じがちな余分な負担を軽減できるようになっています.
では違いは何か?
結論から言えば,EBMが臨床疫学研究によるエビデンスを念頭においた設計になっていたのに対して,SCEBPはあらゆるエビデンスを現実的制約 と実践目的に応じて利用できる設計になっている点に,違いがあります.つまり,SCEBPは,すべてのエビデンスの活用に対応できるメカニズムを備えた方 法論として組み立てられているのです.従来のEBMは,臨床疫学研究によるエビデンスの活用にしぼりこんだ方法であったため,様々な実践領域の実情に応じ て多様なエビデンスを活用することが困難でした.SCEBPは,そうした困難さを克服する方法論として作られているのです.
ひとつ具体例を挙げると,従来から質的研究は,多くのEBMの研究者・実践家たちがエビデンスとして利用すべきであると指摘してきました が,EBMの設計が質的研究になじまないためうまく活用することができませんでした.しかし,SCEBPは,構造構成主義を応用したことによって,臨床疫 学研究と質的研究の科学性と一般化可能性を,出発点において原理上等価に基礎づけることができています.それにより,SCEBPは,現実的制約と実践目的 に応じて,臨床疫学研究だけでなく,質的研究をエビデンスとして活用できる方法を提供できるようになっています.もちろん,質的研究以外にも,たとえばク ライエント・エビデンス,セラピスト・エビデンスと呼ばれる,従来のEBMではエビデンスとはいえないものも,SCEBPでは有効活用できる可能性を提供 します.
もちろん,SCEBPはEBMを否定するものではありません.そうではなく,(上述したように)SCEBPはEBMの拡張ツールなのです.医学で は,SCEBPがなくてもEBMは実践できるかもしれませんが,SCEBPがあればEBMはもっと使いやすくなるかもしれません.純粋なEBMはあまり役 立たなかった領域(看護,リハビリテーション,東洋医学など)では,SCEBPがあればEBMが役立つようになるかもしれません.ただし,SCEBPは理 論上,EBMのポテンシャルを最大限引き出せるよう設計しましたが,現実にそうなるかどうかはユーザーの使い方にかかっているかもしれません.