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京極 真(きょうごく まこと)

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SCEBP(Structure-Construction Evidence-Based Practice)

(更新日:2009年1月29日)

目的

 本サイトの目的は,僕が研究開発している「構造構成的エビデンスに基づいた実践(structure-construction evidence-based practice,以下SCEBP)」を簡単に紹介することです.SCEBPは,2006年に研究論文を発表して以来,おかげさまで多くの方々に関心を 持っていただいております.本サイトによって,もっと多くの方がSCEBPを知るようになればいいなぁと思っています.

 ただし,SCEBPは開発されたばかりであり,もしかしたら使っているうちに不完全なところが見つかるかもしれません.その場合は,ぜひ研究開発にとりくんで頂けたらと思います.開発者としては,SCEBPが今よりも豊かになるのであれば望外の喜びです. 

SCEBPとは何か?

 SCEBPは,構造構成主義を応用することによって,エビデンスに基づいた医療(evidence-based medicine,以下EBM)を理論的,方法論的に拡張させたものです(図).それにより,SCEBPは,様々な実践領域の特徴に応じて,エビデンスを 柔軟に活用できる可能性を提供しています.

 具体的な実践手続きは,1.疑問の明確化,2.情報収集,3.批判的吟味.4.適 用,5.自己評価というものであり,これはEBMと共通しています.つまり,SCEBPは,すでに多くの方が慣れ親しんだやり方を基礎にすることにより, 新しい方法を取り入れたときに生じがちな余分な負担を軽減できるようになっています.

 では違いは何か?

 結論から言えば,EBMが臨床疫学研究によるエビデンスを念頭においた設計になっていたのに対して,SCEBPはあらゆるエビデンスを現実的制約 と実践目的に応じて利用できる設計になっている点に,違いがあります.つまり,SCEBPは,すべてのエビデンスの活用に対応できるメカニズムを備えた方 法論として組み立てられているのです.従来のEBMは,臨床疫学研究によるエビデンスの活用にしぼりこんだ方法であったため,様々な実践領域の実情に応じ て多様なエビデンスを活用することが困難でした.SCEBPは,そうした困難さを克服する方法論として作られているのです.

 ひとつ具体例を挙げると,従来から質的研究は,多くのEBMの研究者・実践家たちがエビデンスとして利用すべきであると指摘してきました が,EBMの設計が質的研究になじまないためうまく活用することができませんでした.しかし,SCEBPは,構造構成主義を応用したことによって,臨床疫 学研究と質的研究の科学性と一般化可能性を,出発点において原理上等価に基礎づけることができています.それにより,SCEBPは,現実的制約と実践目的 に応じて,臨床疫学研究だけでなく,質的研究をエビデンスとして活用できる方法を提供できるようになっています.もちろん,質的研究以外にも,たとえばク ライエント・エビデンス,セラピスト・エビデンスと呼ばれる,従来のEBMではエビデンスとはいえないものも,SCEBPでは有効活用できる可能性を提供 します.

 もちろん,SCEBPはEBMを否定するものではありません.そうではなく,(上述したように)SCEBPはEBMの拡張ツールなのです.医学で は,SCEBPがなくてもEBMは実践できるかもしれませんが,SCEBPがあればEBMはもっと使いやすくなるかもしれません.純粋なEBMはあまり役 立たなかった領域(看護,リハビリテーション,東洋医学など)では,SCEBPがあればEBMが役立つようになるかもしれません.ただし,SCEBPは理 論上,EBMのポテンシャルを最大限引き出せるよう設計しましたが,現実にそうなるかどうかはユーザーの使い方にかかっているかもしれません.

SCEBPの主な概念装置

 SCEBPには,EBMを理論的・方法論的に拡張させるために,従来のEBMにはなかった以下のような新しい概念装置が組み込まれています.これ らの概念装置は,できるかぎり誰もが了解できるよう原理的に組み立てています.言い方を変えれば,ユーザーが洞察を通して了解できるようであれば,これら の概念装置がEBMを拡張させるツールとして機能しはじめることになります(ユーザーに洞察を要請するのは,原理的な方法概念の宿命です).したがっ て,SCEBPの使用に興味のある方は,ぜひ本サイトで示した文献にあたっていただき,概念装置を組み立てるまでの論証過程を丁寧に吟味していただけたら と思います.それで「なるほど! この問題を解くにはこう考える以外にない」と了解できるようであれば,SCEBPはとても強力なツールとして機能しはじ めることでしょう.もし,了解に至れない場合は,SCEBPの威力は削がれてしまうかもしれません.
  • 構造構成的エビデンス…エビデンスとは現象を関心相関的に構造化し,その過程を開示した結果である
  • アナロジーに基づくエビデンスの一般化…エビデンスの一般化可能性とは,エビデンスで示された知見を使って対象Anを理解したいという目的を持ち,かつ対象Anとエビデンスの構造上の同型性を確認できれば,『類推できる可能性がある』という確信構造が成立しうる事態である
  • 目的相関的エビデンス活用法…全てのエビデンスは目的相関的に活用する

文献

  1. 京極 真:新しいEBM-SCEBPがもたらす可能性.看護学雑誌72(12),1070-1074,2008
  2. 京極 真:すべてのエビデンスの一般化可能性を基礎づける.看護学雑誌72(11),988-992,2008
  3. 京極 真:すべてのエビデンスの科学性を基礎づける.看護学雑誌72(10),910-914,2008
  4. 京極 真:「エビデンスの一般化可能性問題」とは何か.看護学雑誌72(9),814-818,2008
  5. 京極 真:「エビデンスの科学論問題」とは何か.看護学雑誌72(8),710-714,2008
  6. 京極 真:方法概念としてのエビデンス-EBMからEBPへ.看護学雑誌72(7),608-613,2008
  7. 京極 真:構造構成的エビデンスに基づいたリハビリテーション.構造構成主義研究1, 28-40,2007
  8. 京極 真:エビデンスに基づいたリハビリテーションの展開-構造構成主義の立場から.リハビリテーション科学ジャーナル2,1-9,2006
  9. 京極 真:EBR(evidence-based rehabilitation)におけるエビデンスの科学論-構造構成主義アプローチ.総合リハビリテーション34(5),473-478,2006
  10. 京極 真:エビデンスに基づいた作業療法の現状,問題,新展開-構造構成主義アプローチ.秋田作業療法学研究12,2-8,2005