緩和ケアのプランニング

個別のケアプラン

終末期と診断された際にどのようなケアを行うかについては画一的な決まりや特定の方法があるわけではありません。

診断された病名が同じであってもその時点での体の状態、病気の進行度・生活環境・治療への反応・オーナー様の生活など病気に関わる全ての要因が異なるため、必要なケアの内容は異なります。

また終末期を迎えるペットの場合はどのように見送りたいかというオーナー様側の意向にも左右されますので上記のような様々な要因を含めてどのようなケアが必要で、どのように行うか個別のケアプランについて話し合うことが大切です。

バランスと優先順位

ホスピスや緩和ケアが必要なケースではしばしば複数の病気が関わっており、それぞれの治療を目的とした薬の処方が必要となります。

(例えば心臓病・糖尿病・アレルギー・肝臓疾患・腎臓疾患の治療薬に加え止瀉薬・制吐剤・食欲増進剤・鎮痛剤など)

それに伴い薬の種類や量も増えて行きますが、特にペットの食欲がない場合や投薬が困難な動物では薬が増えることによりペットとオーナー様双方の負担が増大して行きます。

このような場合は薬の種類や量を調整する・投薬方法を変更する・投薬そのものを再考するなどにより負担の軽減が求められます。

具体的には投与中の薬に優先順位をつける・同じ薬で異なる剤型を試みる・類似の作用を持つ別の薬に変更する・ケアプランを修正するなどを行います。

病状の変化と修正

重度の疾患や終末期では病気の進行に伴い体の状態は刻一刻と変化してきます。

(例えばある日突然食欲がなくなり食べることができなくなる・水を飲めなくなる・これまでにない痛みや症状が出るなど)

また慢性疾患では日によって調子がよかったり悪かったりという変化も見られます。これにより当初の計画とは異なる薬が必要になる・一部の薬が不必要になるなど修正が必要となります。

また特に終末期においては体調の変化が著しく、頻繁な見直しが必要になることがあります。

葛藤

多くの方が終末期を迎えるペットに対して「不必要な延命はしたくない」一方で「ペットができるだけ苦しまないように見送りたい」という希望を持っていますが、終末期の緩和ケアは必然的に延命につながることがあります。

例えば自宅での酸素吸入や自力で水分を取ることができない動物に点滴療法を行うことは最も基本的な生理的要求を補うことで低酸素症や脱水による苦痛を緩和しますが、全く行わない場合と比べ必ず生命期間は延長します。

さらに介護が長期化することでケアをする側(オーナー様や家族)の生活や健康に影響することも少なくありません。

在宅での介護を行う場合は特に自身の意向、直面する問題、精神的な不安や疲労などについて積極的に担当獣医師と話し合うことが大切です。