日本認知科学会第36回大会
ビデオアーカイブ
2019年9月6日(金)
プログラム委員会企画シンポジウム
深層学習時代に認知科学の歴史と価値を見つめなおす
主観を扱う科学としての認知モデリングの未来
企画:飯塚博幸(北海道大学),小野哲雄(北海道大学),高橋英之(大阪大学),森田純哉(静岡大学)
概要説明
森田純哉(静岡大学)
本シンポジウムは,深層学習が様々なタスクにおいて人間を凌駕するパフォーマンスをたたき出す現代において,あらためて認知科学ができることは何か,今後,どのような方向を目指すべきかを議論する.深層学習・ニューラルネッ トを用いつつ人間性の本質に迫ろうとする立場,神経科学や認知科学の伝統を受けつぎつつ主観の科学を追求する立場 などが,それぞれの考えを交流させつつ,新たな知の総合科学の姿と課題を描き出す.
認知科学分野のDynamic Capability
山川 宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ)
※使用されたスライドの一部が著作権上の配慮に基づき差し替えられています.
深層学習・人工知能・認知モデリング
〜心理学・認知神経科学の立場から〜
大平英樹(名古屋大学)
表象,DNN,そしてプロジェクション
鈴木宏昭(青山学院大学)
Offloaded Agency
池上高志(東京大学)
パネル討論
山川宏 × 大平英樹 × 鈴木宏昭 × 池上高志
2019年9月7日(土)
実行委員会企画セミナー
認知科学は,主に情報処理の視点からこころの仕組みを明らかにすることを目指す基礎分野である.一方,こころの諸 問題を科学の力によって解決できないかという社会側からの期待は高まっており,また実社会の問題を科学的方法論でアプローチしたいという志を持った研究者も年々多くなっている印象を受ける.しかし,認知機能のメカニズムは未だ未解明な部分も多く,またヒトのこころの多様性と個人差の大きさを踏まえれば,認知科学の成果を実社会に還元して成功を収めることは,なかなか容易ではないだろう. 本講演では,医療応用における方法論をモデルとして,認知科学の研究成果をいかにして社会還元することができるか,その可能性を論じたい.医療分野は,患者のアウトカムを改善することが目的であり,研究成果と社会還元が密にリ ンクしているため,この問題に対して比較的良いモデルとなり得ると考えらえる.医療分野では,科学的な方法で得られ たエビデンスを目の前の患者の医療に適用していくための手続きとして「根拠に基づく医療(evidence-based medicine, EBM)」が推奨されている.エビデンスは,記述的研究,ランダム化比較試験,メタアナリシスなど研究方法によっていくつかのレベルに分けられるが,EBMは単に“エビデンスに基づいた医療を実施する”という意味ではない.エビデンス と共に,現在の臨床環境,目の前の患者の嗜好と行動特性,また治療者自身のこれまでの臨床経験をバランスよく考慮し た上で,最良の医療を選択することがEBMの肝なのである.EBMのような,研究で得られた科学的エビデンスを目の前の対象者に落とし込むようなシステマチックなステップを持つ方法論が,認知科学の社会還元には重要ではないかと 考えられる. また,目の前の対象者に対しエビデンスに基づいた知見や介入法が本当に有効であるかどうかを知るためには,実際 にその対象者に対して実施してみなければわからない,という点も忘れてはならない.特に,ヒトのこころや行動の多様 性を考えれば,グループ実験デザインで得られた知見が,目の前の対象者に何の疑いもなく当てはまるという保証は全くない.その点に関して,今後,シングルケース実験デザインを用いた研究の重要性が認識されるべきと考えられる.本講演では,このように医療分野における方法論を参考にしながら,認知科学の研究成果の社会還元について論じていく予定である.
概要説明
井藤寛志(愛知大学)
研究成果の社会還元
医療応用を具体例として
田中悟志(浜松医科大学)
神奈川県出身.2000年上智大学文学部心理学科卒業.2005年総合研究大学院大学生命科学研究科修了.博 ⼠(理学).米国NIH,東京大学,生理学研究所等を経て2014年より浜松医科大学医学部医学科准教授. ヒトの学習や記憶,脳の可塑性の仕組みについて心理学,神経科学,情報⼯学などの手法を統合的に用いて 研究している.また,神経疾患,脳血管障害に伴う認知・運動障害に対する効果的なリハビリテーションの研究開発も行っている.
2019年9月6日(金)
フェロー表彰式・講演
石崎 俊先生(慶応義塾大学)
表彰式
1970年 東京大学⼯学部計数⼯学科卒業,同助手
1972年 通商産業省⼯業技術院電子技術総合研究所入所
1981年 ⼯学博⼠(東京大学)
1981~1982年 イェール大学客員フェロー
1984年 同所パターン情報部推論システム研究室室長 1988年 同所知能情報部自然言語研究室室長
1992年 慶應義塾大学環境情報学部教授
2013年 慶應義塾大学名誉教授,(一財)SFCフォーラム理事,現在に⾄る.
日本認知科学会会長,言語処理学会会長,ISO/TC37言語と用語標準化委員会委員長,などを歴任.
講演
言語理解機能のモデル化への歩み
-言語理解システムと脳科学の融合を目指して-
松沢哲郎先生(京都大学)
表彰式
1974年 京都大学文学部哲学科卒業
1976年 京都大学大学院文学研究科博⼠課程中退,同大学霊長類研究所(心理研究部⾨)助手
1987年 京都大学霊長類研究所助教授
1989年 京都大学理学博⼠
1993年 京都大学霊長類研究所(行動神経研究部⾨思考言語分野)教授
2006年 京都大学霊長類研究所所長
2016年 京都大学高等研究院特別教授
講演
わかちあう心の進化
2019年9月6日(金)
論文賞表彰式
論文賞
大北 碧, 二瓶 正登, 西山 慶太, 澤 幸祐
ヒト‐ウマインタラクションにおける「人馬一体」感とは何か?, 認知科学, Vol.25, No.4, pp. 392-410 (2018).
奨励論文賞
井上 紗奈, 本田 秀仁, 森 数馬, 山本(前田) 万里, 椎名 武夫, 曲山 幸生, 永井 成美, 和田 有史
“科学的”情報はどのように理解されるのか? ―食品の機能性理解と認知特性の個人差を視点とした分析, 認知科学, Vol.25, No.1, pp. 7-25 (2018).
奨励論文賞
城戸 恵美子, 新垣 紀子, 朴 信映, 青山 征彦, 河原 健太
市街地における運転者・歩行者の不安感を考慮した自動運転の検討, 認知科学, Vol.25, No.3, pp. 293-309 (2018).