天地明察

冲方 丁(うぶかた とう)著 『天地明察』 [角川書店 1,800円]

江戸時代前期に日本最初の国産暦を作った渋川 春海(1639-1715)を主人公とする小説。2010年度の本屋大賞を受賞した。春海は天文暦学者、囲碁棋士、神道家、和算家といろいろな分野で活躍した。小説には江戸時代前期の多くの文化人との交流が描かれている。江戸幕府碁方の安井家2世安井算哲として江戸城で大老酒井忠清の碁の相手をしたり、徳川光圀が庇護者になったり、会津藩江戸屋敷に世話になり、保科正之から改暦事業を命ぜられる。関孝和を崇拝し、国産暦を完成させるに当たり、関孝和との交流で得ることが多い。東海村出身の和算家・村松茂清の円周率の算出の話も出てくる。和算に興味のある人には楽しい本である。